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第30話

「エリエスなの?」

私は私の姿をした少女に問いかけました。


顔を上げた少女は、私が転生した直後のような感情の抜け落ちたエリエスの顔をしていました。


「また、危ないことをしてしまったから、お母様に嫌われてしまうわ。折角あなたがお母様にまた愛してもらえるようにしてくれたのに…。ごめんなさい。」


その声には感情を感じさせる抑揚がないのに、私とエリエスは心が繋がっているからか後悔の念がひしひしと胸に広がっていきました。


「もし嫌われても、また関係を修復していけばいいのよ。お母様はエリエスのことを愛しているもの、大丈夫だよ。」

「でも、私には難しいの。相手の気持ちがよくわからないから。」


エリエスの諦めの気持ちが心を支配し、全てがどうでもいいような衝動に襲われる。

飲み込まれたらダメだと私は必死に抗い、エリエスに問いかけました。


「ねぇ、どうしてエリエスはこんなところにいるの?」

「誰にも必要とされていないし、お母様にも嫌われてしまったし、外にも出られないから、もう生きているのが嫌になったの。だから、部屋に保存しておいた毒草を口にしてベッドに横になったら、声が聞こえてきて…。」


そのとき、エリエスが聞いたであろう『声』が私の記憶に流れ込んできた。


『愛し子よ、あなたを理解してくれる魂を呼び寄せますので、どうか生きることを諦めないで。あなたの幸せを願っています。どうか…』


あぁ…エリエスは自殺を図ったのか…。

切なくて悲しくて涙が溢れ出しました。

14歳の少女が世界に絶望して死を選んだことが、元教師の私の胸を深くえぐって、冷静さを奪います。

気づくと私は、エリエスに駆けより、泣きながらエリエスを抱きしめていました。


「辛かったよね。愛されたかったよね。理解してもらいたかったんだよね…。」


すると無表情だったエリエスの瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、大声をあげて泣き始めるのでした。

その慟哭は私の心にも反響し、2人でいつまでも泣き続けました。


あぁ、お母様が言ってたっけ。泣き出したら止まらないのは昔のままだって。

先に心が落ち着いてきた私は、気になったことを振り返ってみました。


まず、エリエスは『愛し子』と神様(?)に言われていた。

小説のなかで聖女が神託を受けるシーンは無かったし、愛されてることにあえて順位をつけるなら、エリエスのほうが上なのかも。

あと、私は死後にエリエスのためにこの世界に呼び寄せられたみたい。

エリエスを理解してあげて、もう一度生きる気力を取り戻させるために。

もちろん、それは頑張るけど、エリエスが気力を取り戻すと私は湖に落ちたときみたいに何もできなくなるのかな…。

それは正直ちょっと怖い。でも、今は考えないでおこうと思う。

2人で幸せになる道を探していきたいもの。


もう一つ気になったのは、部屋に毒草が保存されているという事実。

エリエスの植物コレクションがあるのかな?

どうも、あの『声』しかり、全ての記憶を共有できた訳じゃないみたい。

もしかしたら王子毒殺事件に関わっていそうで気になるし、早急に発見して毒草は処分しておかないとね。


気づくとエリエスも泣き止んでいた。

私の目を赤く腫れた瞼でまっすぐに見つめています。


「あなたがお母様の愛と友達を私にくれたから、勇気を出してここから出てみたけど迷惑をかけてしまったわ。私はまだここにいるから、体をあなたに返すね。」

「エリエスは、それでいいの?」

「あなたのほうが、うまく生きられるもの…。」

「今はそうかもしれないけど、エリエスも成長してうまく生きられるようになるわ。絶対よ!だから諦めないで。ここから私を見守っていてね。」

「うん、ありがとう。」

「エリエスと私、2人で一緒に幸せになりましょう!」

「うん」

「また、あなたに語りかけるから、できたら返事してね。」

「頑張ってみる。」


そのとき、遠くから私たちを呼ぶ声が響いてきた。

『エリエス、どうか死なないでくれ!お願いだ、目を覚ましてくれ!』

これは殿下の声?


「もう時間みたい。あなたに理解してもらえて嬉しかったよ。」

そのときのエリエスは確かに笑顔を浮かべていました。


何か言おうとすると空間に強い光が差し込み、エリエスの姿が見えなくなってしまいました。

光りに目が慣れてくると、私を心配そうに覗き込む殿下達の顔がそこにはありました。


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