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第29話

湖畔に到着すると男性陣の手を借りて下車します。

小さな湖ではあるけど、湖面が太陽の光を反射してキラキラと光り、とても綺麗です。

考えてみれば、転生してからというもの私の移動した場所って侯爵家、王城、アニーの栽培場の3カ所だけだった…。

この美しい景色を見て、本当に小説の世界にいるんだなぁと改めて実感しました。


私たちが湖に見入っている横では、モンキーポッドのような横に広く枝を伸ばした大木の木陰に王家のできるメイドさんたちがスムーズにテーブルをセッティングしていきます。

今回はシエナはお留守番だけど、来ていても、このテキパキとした動きにはついていけないだろうなぁと思う…。


私たちは4人でテーブルを囲み、お茶を飲みながら談笑の時間をとりました。

殿下はアニーの美しい所作に感心していたので、いかにアニーが頑張っているかを力説しておきました。

初めは固くなっていたアニーも、私とカインのトゲトゲしい掛け合いを聞いているうちに緊張が解けたのか、時折笑ったり、質問したりと会話に馴染んでいきました。

うんうん、いい感じ。


また、緑の豊かな場所に来たため、エリエスの興奮をビンビン感じます。

この大木に触れたいんだよね?

『ごめんね、今は我慢して』と心の内にいるであろうエリエスに語りかけますが、2人の意思が同時に思考しているようで落ち着きません。


お茶を飲み終わり、いよいよボートに乗り込むことになりました。

前世でもスワンボートに女友達と乗って必死にペダルを漕いだくらいしか経験がないので、男性と2人でボートなんて緊張しちゃいます。

殿下の手を借りてボートに乗り移る際にはバランスを崩して殿下に抱き留められるというハプニングに見舞われ、2人とも真っ赤になってしまいました。

その流れもあり、向かい合って座った後も顔の火照りがとれず、殿下がオールを上手に動かすのをボーっと眺めていました。


「エリエス嬢は、カインと仲が悪いというより、気楽に接することができる関係を築いているようだね。」

殿下が意外なことを口にしました。

「そう見えますか?私は失礼な人という印象が抜けていないのですけど…。」

「そうであれば安心なのだけどね。カインだけは名前で呼んでいるから嫉妬しているのかもしれない。」

殿下は拗ねているのかもしれない。安心させてあげないと。

「決して殿下が心配するような関係ではありませんよ。今もアニーと2人でボートに乗っていると思うと、失礼なことを言ってアニーを困らせていないか心配でなりません。」

私はアニーたちが乗るボートのほうを気にしながら伝えます。

「エリエス嬢、もしよければ、このように2人きりのときには私のこともランディと愛称で呼んでもらえないだろうか?そして私はエリエスと呼ばせてほしい。」


真剣な顔でお願いされて、私もお姉さんムーブなんてする余裕はなくなっちゃいます。

婚約者だし愛称呼びは変じゃないよね。

うわぁ、恥ずかしくて殿下を直視できない。

でも、真摯に答えないとダメよね。

「はい。ランディ。」

意を決して真剣に答えました。


「ありがとう。エリエス。」

蕩けそうな殿下の顔に、私のドキドキは止まりませんでした。


互いに言葉を交わさずとも甘い雰囲気のなか、ボートは湖面をたゆたっていきます。

すると、水面から顔をだすように咲く蓮の花に似た美しい桃色の花が目に映りました。

エリエスの記憶をもってしても該当する花を判別できません。

新種の花なのかなと考えているうちに、ボートが花のすぐ横を通りかかります。


そのときでした、『ドクン』とエリエスの強い鼓動を感じたと同時に、体が勝手に動いてボートから身を乗り出し、私の手は桃色の美しい花に触れていました。


(水精花 水の精霊の祝福を受けた花 根には巨大な水の魔石を宿す)


脳裏にすごい情報が流れたかと思うと、私の体はバランスを崩して湖に落下していきます。

『キャー』と叫んだはずなのに、その声は音にならず、「あっ」という驚いた声が漏れていました。


私は泳げるのに体を動かすことができず、湖に沈んでいきます。

あー、エリエスは泳げないんだなと思いつつ、最悪のタイミングで入れ替わったことを悟りました。


薄れゆく意識の中で、誰かが沈んでいく私の体を抱き留めてくれたことに安堵しましたが、そこで意識は途切れてしまいました。



気づくと私は薄暗く何もない空間に立っていました。

ここは?私は死んだの?

お母様やアニー、殿下のことを想い、2度目の人生もあっけなく終わってしまったことに愕然としていると、空間にか細い声が響きました。

「ごめんなさい」


声のするほうを見ると、そこには私の姿をした少女が膝を抱え、顔を伏せて座りこんでいました。


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