第26話
殿下とカインは王立学校が夏季休暇中ということもあり日程調整がつきやすかったので、お茶会から10日後に湖畔でボートのイベントが開催されることになりました。
当日は殿下とカインが王家のゆったりした馬車で迎えに来てくれることになっているので、その前にアニーに侯爵家に来てもらい、シエナの用意した服に着替えて到着を待つことにしました。
着替える場所は私の部屋にしたので、到着したアニーが私の部屋に案内されてきました。
「お嬢様、アニー様をお連れしました。」とメイドの声が扉の外で響きました。
「わかりました。部屋の中にご案内して。」
アニーを自室に招くのは今回が初めてなので、ちょっと緊張してしまいます。
昨日は気になって部屋を片付けようとしたら、シエナに止められて、メイド達を呼ばれてピカピカに磨きあげられてしまいました。
いつも、しっかり掃除してくれているのに、余計な仕事を増やして申し訳ないです。
アニーは、部屋の内装とか家具が気になっているようだったけど、そこは淑女としてぐっと我慢しているようです。
「失礼いたします。エリエス様のお部屋にお招きいただいて光栄です。」
そう言うとアニーは深めの会釈をした。
だいぶ緊張しているなぁ。ほぐしてあげないと。
「固いわよ、アニー。私たちは友達なのだから気を楽にしてちょうだい。それに、ここには私とシエナしかいないのだから淑女らしい振る舞いも不要だわ。」
そして私はアニーの手をとってソファーに案内して座らせると、隣に腰をおろしました。
「えっ、隣に座るのですか?」
アニーが驚いて聞いてきました。
そっか、普通は向かい側に座るよね…。お母様との習慣でついつい。
「ごめんなさい、嫌だったかしら?」
私が立ち上がろうとすると、アニーが私の袖をつまんで止めました。
「嫌ではありません。友達ですから…。」
頬を染めているアニーがかわいくて、横から抱きついちゃいました。
私って、転生してからスキンシップ過多だなぁ。
寂しかった幼少期の影響が出ているのかも。気をつけないとね。
その後はシエナに煎れてもらったお茶を飲みながら、殿下やカインがどういう性格かなどアニーに教授していきました。
「カインは『女らしくしろ』とか言うかもしれないけど、アニーなら大丈夫よ。完璧な淑女だからね。」
カインのことは、ちょっと悪く言っちゃいました。
私はまだまだ未熟者です…。
話が終わる気配がないので、シエナが声をかけてきました。
「お嬢様方、そろそろお着替えを済ませませんか?」
「そうね、着替えてしまいましょう。」
私は用意された服がどのような感じかワクワクしてきました。
部屋の一角には衝立を予め設置して、他の人に見られずに着替えられるようにしてあります。
「では、エリエスお嬢様からお召し替えいたしましょう。お手伝いしますね。」
そう言うと、衣装箱を持ってシエナが衝立の向こうに歩いて行くので、あとに続きました。
衝立から顔だけだして「アニー、少し待っていてね。」とウィンクしたら、笑顔で見送ってくれました。
シエナが用意した服は、首元にリボンをあしらった白いブラウス、紺色のプリーツスカート、厚手の白タイツのようなレギンス、青いリボン飾りのある白いつば広帽子でした。
ふむふむ、前世だと避暑地に来たお嬢様みたいな印象かな。
「アニーも同じようなコーデなの?」
「はい、つば広帽子のリボンの色を緑にしたくらいですね。」
お揃いコーデかぁ。双子みたいだけど、この世界では普通なのかな?
「ほぼ同じ服装でも違和感はないかしら?」
「かわいいので大丈夫じゃないですか?」
ん?逆に聞かれたような…。本当に大丈夫なのかな…。
着てみたところ、エリエスは元々お姫様みたいに整った顔立ちなので、この服装も凄く似合っていると感じました。
まぁ、さっきのは聞かなかったことにしよう…。
衝立から出てアニーに感想を求めてみました。
「エリエス様、とてもお似合いです。かわいい妖精が迷い込んだかと思いましたよ!」
褒めすぎだよ~と思いつつアニーを見ると、視線が私のスネの辺りに集中していて丈の短さが気になっているみたい。
「アニーの服も同じデザインなんですって。お揃いね。」
私がニコっとして言うと、アニーの笑顔がひきつりました。
着替えたアニーは恥ずかしそうに衝立から出てきました。
二人並んで姿見に映ってみると、中学生の仲良しお嬢様が制服を着ているみたいな印象でした。
私的には『あり』だな。アニーとペアルックも嬉しいしね。
「さぁ、日焼け対策にラベンダーの化粧水を塗っておきましょう。」
シエナも含めて3人でいそいそと塗り込んでいると、王家の馬車が到着したようで、外が騒がしくなりました。
私はアニーと手をつないで階段を降り、玄関に向かいました。
外に出ると、殿下たちにお母様が挨拶しているところでした。
「お待たせしました。」
私の声に気づいた3人は私たちの方に視線を向けると、時間が止まったかと思うほど、ピタリと固まってしまうのでした。




