第23話
アーランド殿下との4回目のお茶会の日がやってきました。
今日は晴天に恵まれたので、いつものガゼボでお茶会をするため庭園を通り抜けていきます。
途中で前世でよく見たヒマワリのような花が太陽に向かって咲いている区画があり、懐かしさに足を止めました。
王城の庭園にしてはダイナミックな花だけど、国外から輸入したのかな?
転生してから初めて見るよ。うん。
ここでしか見られない植物があるから、エリエスも楽しみだったんだろうなぁ。
私は卒業旅行で北海道にいったときに、網走で見たヒマワリに感動したなぁと思い出に浸っていると、猛烈に触れてみたくなってきました。
これはエリエスの衝動だ…。
最近、エリエスとの距離が近くなってきている気がするんだよね。
お母様が苦しんでいたときに『もうやめてあげて』と確かに心に響いたし、近いうちに意思疎通できるようになるかもしれない。
『エリエスと話せるようになるのを楽しみに待ってるね』と、自分の胸に呼びかけてみました。
すると、トクンと返事が返ってきたので嬉しくなりました。
そうだ、この花に触ってみたいんだよね?
案内してくれている騎士様をこれ以上待たせるのも申し訳ないと思いつつも、ちょっとだけエリエスにサービスしたくて、ヒマワリのような花に触れてみた。
シエナの視線が『何をしているのですか?』と冷ややかに刺さって痛いです…。
(サンズグレイス 種は食用可 毒性なし 稀に『太陽の魔石』を種の内部に宿す)
え?太陽の魔石?そんなのあったっけ?
真面目に学んできたけど、やっぱり記憶にはない。
新種の魔石を発見したら凄くない?
私は興奮して騎士様に「少々お待ちください。」とお願いし、次々とサンズグレイスに触れていきました。
(サンズグレイス 種は食用可 毒性なし 『太陽の魔石』を宿している)
みつけた!
エリエスの興奮もビンビン伝わってきます。
びっしり並ぶ種をよく観察すると、1つだけ赤みがかったものが混じっていました。
怒られませんようにと祈りつつ、その種を採取してみると、なんか温かい。
種の皮を剥いでみると、その小さな粒は淡い光を放っていました。
どうしよう?城内にあったのだから殿下に報告すべきかな。
でも、ギフトのことも伝えてないのに不自然すぎない?
悩んだ末に、保留することに決めてシエナに預けました。
シエナは一瞬驚きの表情を見せましたが、すぐに澄し顔に戻って魔石をしまいこみました。
待ってくれていた騎士様に、ひきつった笑顔を向けて誤魔化してみます。
「私、このような花は初めてみるものですから、つい興奮してしまいまして…。」
次々に花に触って、種をジロジロ見て、種を採取したことは見られているよね。
ダメだ、王家の庭園から種を盗んだようにしか見えないもん。
ちゃんと殿下に太陽の魔石のことは報告しよう…。
ガゼボに到着すると、殿下が迎えてくれましたが、今日は表情が冴えないような…。
私も後ろめたさから冴えない顔になってそうですけどね…。
「お待たせいたしました。アーランド殿下。」
「エリエス嬢、今日は来てくれないかもしれないと心配していたんだ。」
そう言って殿下は私の手をとり、少しほっとしたようでした。
向かい合って座ったところで、殿下の心配について確認してみます。
「あの、私がお茶会に来ないとご心配されていたようですが、何かありましたか?」
「いや、交換したハンカチをカインに見せたことを怒っているのではないかと…。手紙の文面には鬼気迫るものがあったのでね。」
あー、大急ぎで書いたから文面に優雅さとか無かったもんね。淑女失格です。
「そのことなら怒ってはいません。ただ、上手くできなかったので恥ずかしいのです。ですから、今後は他の方に見せるのはお止めください。」
「そうか。もっと自慢したかったので残念だが、エリエス嬢がそう言うなら我慢するよ。」
殿下は少し寂しそうに約束してくれた。
そんな捨てられた子犬みたいな姿を見せられたら、自称お姉さんの私としては優しくしてあげたくなっちゃうじゃない…。
「また、一緒に刺繍を刺しましょう。上手くできたら差し上げますので、それならお見せしていただいて大丈夫ですよ。」
私は笑顔で代案を提示してあげました。
「そうか、それは母上も喜ぶよ。」
殿下は嬉しそうに笑ったけど、私は王妃様もセットなことに笑顔がひきつりました。
まぁ、未来のお姑さんなのだから、よい関係を築いていかないとね…。
「そうだ、カインのことで迷惑をかけてしまったね。申し訳ない。そして、私の趣味のことを応援してくれてありがとう。」
殿下のお顔が冴えなかった理由の1つはカインか。
「お気になさらずに。あの方も殿下のことを思っての行動だったと理解しています。」
「カインから刺繍を『女々しい』と言ったことを謝られたよ。エリエス嬢に言われて反省したとも言っていたな。」
「反省されたのですね。それなら、あの面会にも意味があったと嬉しく思います。」
ふむ、ランキング圏外からギリギリ10位に戻してあげましょう。
「それで、カインはエリエス嬢と仲直りしたいようなんだ。その、私の側近として私の婚約者であるエリエス嬢と仲が悪いままでは不味いと思っているようでね。」
『婚約者』のあたりで耳が赤くなっていました。
推しの可愛い姿を私は見逃しませんよ!
「確かに、今後もお会いする機会は多いでしょうから、良好な関係は築いておきたいです。」
「どうだろう、一緒にボートでも乗りに行かないかい?私もエリエス嬢と遊びに行きたいと思っていたし。」
おまけのカインもいるけど、初デートのお誘いですよね、これは。
殿下は頬を赤くし、緊張して返事を待っています。
でも男2女1は微妙じゃないですか?
うん、いいこと考えちゃった。
「女性が私1人では心細いので、仲良くさせていただいているレイモン準男爵令嬢もお誘いしていいですか?」
デートのお誘いに成功したことで、殿下の表情は花が咲いたように明るくなりました。
「もちろんだよ。エリエス嬢の懇意にしているご令嬢なら、私も挨拶しておきたいしね。」




