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第21話

その日の夜、お母様は私の寝室を訪ねてきました。

お母様は起き上がろうとする私をベッドに腰掛けさせて、隣に座りました。


「エリエスの言う通りだったわ。意味はあったの。お父様に愛されているとわかったら、心が楽になったわ。ありがとう。あなたは神様が私に遣わせてくれた天使だわ。」

そう言って、私を抱きしめました。

私とエリエスの心の充足が重なり合って、心地よいです。


「お母様、お父様が変わった訳ではないので、これからも心ないと感じる言葉はあると思います。だから、お父様はそういう人なんだと思ってください。それでも、お母様を愛していることは事実ですし、お母様がただ側にいてくれることがお父様にとっての幸せなんだと思います。私もお母様が側にいてくれるだけで幸せです。」

また傷つかないように、大事なことは伝えておきました。

ついでに甘えて、お母様の胸に顔を埋めてグリグリしちゃいました。


「そうね。お母様も大事な家族から愛されて幸せよ。」

お母様の言葉に、もう悲壮感はありませんでした。


その日は私のベッドでお母様と一緒に寝ました。

私は、『育て直し』とはこういうことかなと思いながら、自分の自己肯定感が低かったことをこのとき初めて自認しました。

エリエスの穏やかで定期的なトクン、トクンという鼓動を感じながら、私は幸せな眠りに落ちていきました。



アーランド殿下との4回目のお茶会の日が迫るころ、思わぬ人から面会を希望する手紙が届きました。

カイン・ロードナイト伯爵家子息。殿下の親友にして側近候補で私の原作中の2番目の推しキャラです。

会ってみたいとは思っていたので了承する手紙を返したのだけど、エリエスの記憶を辿っても関わりがないというか、過去に殿下から紹介されたときにペコリと頭を下げただけ…。

何の用だろう?


不思議に思っているうちに面会の日はやってきました。


一応シエナにおめかししてもらい客間で待っていると、伯爵家の馬車が到着しました。

今回はアニーのときのように、お出迎えに息を切らして向かうことはしません。

私も淑女の自覚が高まりましたとも…。

一応、爵位もグリーンウッズ家のほうが上だしね。


しばらく待っていると、扉の外からシエナの「ロードナイト伯爵家子息カイン様をお連れいたしました。」との声がかかった。

「どうぞ、中にお連れして。」

ちょっと推しに会えることでドキドキしているのを隠して、冷静に返しました。


扉が開くと、淑女らしくゆったりと立ち上がってカインに向かい合いました。

うんうん、1年若いとはいえ私の知っているカインとあまり変わらない。

少し幼い感じもするけど、赤髪にやや吊り目で気が強そう、体は鍛えているのがわかるくらいガッシリしています。

私は淑女の礼をし、穏やかな声を意識してご挨拶します。

「ようこそ、おいでくださいました。」


「こちらこそ、急な面会に応じてくれて感謝します。」

おぉ、結構しっかりしてる。やんちゃなイメージ強かったけど。


「立ち話もなんですので、どうぞおかけください。シエナ、お茶をお願い。」

カインは軽く会釈すると私の向かいの椅子に腰掛けた。


お互いお茶に口をつけたところで、私からここ数日気になっていたことを聞いてみました。

「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」


「ふむ、エリエス嬢は随分と印象が変わったな。以前は無表情な人形のようだったから、本当に王太子妃として大丈夫なのか心配だったが。」


むむむ、私の問いかけに正対してないし、今のはちょっと失礼すぎません?

こめかみの所がピクっとなりましたよ。

自分に『冷静に!』と言い聞かせ、言葉を返しました。


「私も成長しておりますので、もうそのような心配は無用ですよ。それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

同じ質問2回目だよ!次も正対しなかったらキレそうなんですけど。


「うん、今日はエリエス嬢に頼みたいことがあって来たんだ。」

「それは、どのようなご依頼ですか?」

「率直に言うが、アーランド殿下に女々しい趣味をやめさせるよう協力してほしい。」


なんですと!?

その瞬間、私の人気キャラ・ランキングに大きな変更が起こりました。


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