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第17話

王城に馬車が到着しました。

今日は生憎の曇り空で、雨が降りそうにどんよりしているので、王城内の客間に案内されました。

転生してから初の入城で、その荘厳さやいたる所に飾られ彫刻や調度品に目を奪われ、私はキョロキョロと視線を彷徨わせて落ち着かない。

庭園に行けないことがわかってから、ガッカリ感が胸中に渦巻いていて、私の興奮とエリエスの消沈が混ざって変な感じです。


「ちゃんと前を見て歩いてください。」

後ろを歩いているシエナから小声で注意されちゃいました。

はいはい。ちゃんと淑女らしくしますよ…。


客間の前に到着すると、案内してくれていた若い騎士様は扉をノックして室内に向けて到着を報告しました。

「殿下、グリーンウッズ侯爵令嬢をお連れしました。」

すると中に控えていたメイドさんが扉を開けてくれました。

部屋の中は、ゴテゴテした調度品はなく、1つ1つが質の良さそうなシンプルな作りで落ち着く雰囲気です。

部屋の中央のテーブルにはスリーティアーズが置かれていて目を惹きます。

殿下より先にそっちに目がいったことは内緒です…。


私が淑女の礼をすると、「エリエス嬢、よく来てくれたね。」と殿下自ら私の手をとり、椅子に案内してくれました。

見た目は美少年でも、もう立派な紳士ですね。

手に触れられると、やっぱり恥ずかしくて顔が火照っちゃいます…。


その後、煎れてもらった紅茶に殿下が口をつけたのを見て、私も口をつけます。

そして、はしたないかなと思いつつもサンドイッチに手を伸ばしてしまいました。

だって、生クリームとイチゴなんだもん。

これはずるいよ、前世の高級フルーツサンドみたいで我慢できない。

私の大好物だし…。

あ、前回のお茶会で好きな食べ物の話したから、用意してくれたんだ。

優しいなぁ、殿下。


「美味しいかい?」

「はい、とても美味しいです。私の好物をご用意いただき、ありがとうございます。」

「それはよかった。エリエス嬢の幸せそうな顔が見られて嬉しいよ。」

そう言って殿下は私に微笑みかけました。

ぐはっ、お姉さんはキュンとしました。キュンとしましたとも!


「エリエス嬢、君とお母上で化粧品と香油の特許申請をだしたと耳にしたのだけれど、何か商売を始めるのかい?」

さすが王族、情報がはやい。それとも婚約者のことだからいろいろ調べられているのかな?

まぁ説明の手間が省けるので気にしないでおきます。

「まだ、商売にするほど多く生産できないのですが、ゆくゆくはそういうことも考えてはいます。実はラベンダーの精油を殿下にプレゼントしようと思い、今日は持参して参りました。」

チラっとシエナに視線を送ると、頷いてテーブルに精油の小瓶を3つ並べてくれます。


「バスタブに2,3滴落としていただくと、浴室に香りが広がります。苦手な香りでなければ、是非お使いください。陛下と王妃様にもお渡しいただけると嬉しいです。」

「ありがとう、大切に使わせてもらうよ。」

そう言うと、王城のメイドさんがすすっと回収していった。


「エリエス嬢はやりたいことに正直で羨ましいな。私は立場上、自由に趣味に時間をかけることもできないからね。」

少し寂しそうな顔で殿下は言いました。


「あの、殿下のご趣味とはどのようなものでしょうか?」

私は興味を抑えられず聞いてみました。小説にも趣味の話はなかったはず。

「あぁ、実は恥ずかしくて公表は避けていたんだけど、刺繍を少々ね。幼い頃、母上が刺繍するのを羨ましがって自分もやってみたいと駄々をこねたのが始まりでね、刺繍をしているときは他のことを考えなくていいから落ち着くんだ。」

殿下は言い終わると恥ずかしそうに視線を逸らした。


殿下が刺繍!見てみたいなぁ、いいじゃない、ギャップ萌えだよー。

興奮する胸の内を隠しつつ、欲まみれの提案をしてみました。

「素敵な趣味だと思います。殿下の繊細なお気遣いは、その影響かもしれませんね。次のお茶会では、一緒に刺繍をしませんか?ハンカチを交換したりしましょう。」

推しの手作りグッズ、どうしたって欲しいでしょう!


殿下は驚いたように一瞬固まって、その後私を見ました。

「女々しい趣味と馬鹿にしないのかい?」

「趣味にいいも悪いもないですよ。人の趣味に文句をつける人の方が、狭量で軽蔑します。」

『まだラノベとか読んでるの?』と言ってきた大学時代の知り合いのことを思い出し、やや不愉快になってしまいました…。


「そうだな、趣味にいいも悪いもない。うん、エリエス嬢が婚約者で本当によかったよ。」

そう言うと、殿下は蕩けそうな甘い笑みで、私を誘惑してくるのでした。

正直、心臓に悪いです…。


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