何でやねん!
数日後、ジィド辺境伯からの早馬がリエッサ王妃の元に届いた。
早馬は辺境伯からの書簡を持っていた。
それを読んだリエッサは驚いた。
そこにはサツキナ姫がレッドアイランドの第三皇子と婚約とあった。そして自分を謀った王妃を決して許す事は出来ないと。税金は0.5割増しどころか今までの1/2しか払わないと書いてある。
リエッサにはどう言う事か全く分からなかった。サツキナ王女が婚約?
ルイスはそんな事は一言も言っていない。
ウチに来たダンテ王の使者もそんな事は言っていなかった。
という事は500万ビルドはレッドアイランドが結納金として支払ったのか?
リエッサ王妃は500万ビルドの謎が解けたと思った。
レッドアイランドは砂漠の中のオアシス国家として最近とみに発展してきた国だ。
強力な軍をもち、近隣の弱小部族を征服し強大になりつつある。あの国がブラックフォレスト王国と同盟を結んだら、これは……。
リエッサは爪を噛む。
ルイスは一体何をやっているのだ。リエッサは呆れる。
いまひとつあの婚約者は抜けていると言うか、ぼんやりさんと言うか。だが、それもまた可愛いのだが。(ああ、早く帰って来ないかしら)
それよりジィド辺境伯の書簡の最後の文である。
近々、軍を引き連れ王都にご機嫌伺いに参ります。と、あった。
三男のシャルルを同行させますから前王ジョレスと正妻だったリナ王妃の娘であるサンドラ王女にお目通りをお願いしますとある。
軍を引き連れ王都には入れない。それは謀反である。
ジィド辺境侯は謀反を企てているのか?
そしてサンドラ王女に三男を……?
私の王位をはく奪し、我が手に納めようとしているのだ。それもサンドラ王女とは……。
女が届けられぬからと言ってそこまで激怒するとは。色狂いの変態オヤジめ。
折角おばあ様がサツキナ姫を手に入れる新しい策を授けてくださったのに……。
どうしてもう少し待てないのか。
ほとほと嫌になる。
それともこの機に乗じて一気に目障りなあのおっさんを叩いてしまおうか。
リエッサはふと思う。
軍を率いて来るなど謀反でしか無いのだから。ぶんぶんとうるさいハエを叩き落すのだ。
大きなハエを叩き落すのはいいのだが、問題は神官達と信者達である。ジィド辺境伯は敬虔なゼノン教の信者という仮面を被っている。だから彼に付き従うゼノン教の信者達は大勢いるし、それから神官達もここぞとばかりに私を責めるだろう。今以上に。
リエッサは頭が痛くなって来た。
リエッサは「フロレス武官を呼べ」と言った。
これはまたおばあ様の御知恵を借りるしか無い。そう思った。