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シンジノア・シャーク

オルカ国のシャーク宰相邸の中庭。

美しい薔薇が咲き誇る庭園の中で白い椅子に座って優雅にアフタヌーンティーを頂くサツキナとカラミス王子。

サツキナの従者達はそれを遠くから見守る。



食器もテーブルクロスもナプキンもそれは上等な物である。ケーキスタンドには美味しそうなお菓子が素敵に盛り付けられている。

「どれも美味しそうですね。サツキナ姫」

カラミス王子は上機嫌でどれがいいかななどと言いながらサツキナに声を掛ける。


「何であなたがここにいるのよ」

サツキナは不満そうに言った。

「良いじゃ無いですか。こんなに沢山あるのだから。私に少し分けてくれたって」

カラミス王子も不満そうに言う。

「違う! ケーキの話じゃ無くて。カラミス王子。レッドアイランドの船はもう帰ってしまったのに、あなたはいつまでここにいるお積りなのかしらって事です」

サツキナはそう言いながら野イチゴのムースを手に取る。カラミスは「あっ」と小さな声を上げる。

「私もそれが良かったのに……」

「残念でした」

「じゃあ、私はチョコレートにします。……サツキナ姫。先日のお母様のドレスも素敵でしたが、そのドレスもとてもお似合いですね」

ケーキを一口食べてカラミス王子はサツキナを褒める。



「あら、そう? これはシャーク宰相の奥様がご用意してくださったのよ」

「あなたには菫色が良く似合う」

カラミス王子は感心した様に言う。

「それにその真珠の髪飾りも素敵だ」

うっとりとサツキナを見詰める。



サツキナはコホンと咳払いをする。

「それよりもいつまでここにいるお積りだとお尋ねしたのですが」

サツキナは言った。

「勿論、サツキナ姫がいる間はここにいます。そしてサツキナ姫をブラックフォレスト王国に無事に送り届けます。それが私の償いであり使命だと思っているのです。私はあなたを深く愛してそして尊敬しているのですから。私を打ち負かした女性は姉のミランダとサラマンダー国のジル王女だけです。ミランダもジル王女も女性で有りながらレッドデザイアー屈指の勇者でもあります。あなたは彼女達に並ぶ程の勇者だと私は思ったのです。あなたは私の尊敬を勝ち取ったのです。なかなかいませんよ? そんな女性は」

カラミス王子ははははと笑いながら言った。



サツキナは「はあ~」とため息を吐く。

「あなたってつくづく変な男ね」

「それは褒め言葉と取って置きましょう」

「褒めて無いから!!」


にこにこと笑ってお菓子を食べるカラミス王子。と、薔薇園の向こうから一人の騎士がやって来るのが見えた。騎士は銀色の兜を小脇に抱えている。頭からすっぽりと頭巾を被って目だけが見えている。

「ちょっとカラミス王子。誰かが来るわ。誰かしら?」

カラミスも振り返る。

すぐに護衛の者達が駆け寄って誰何をする。

オダッチがサツキナの元に駆け寄る。

「サツキナ様。シンジノア様がお見えになりました」

「ええっ?」

サツキナは慌てて立ち上がった。カラミス王子も立ち上がった。



騎士はカラミス王子とサツキナの前に来るとにこりと笑った。

「やあ、可愛らしい魔族のお客様だ。あなたがサツキナ姫ですね。私がシンジノア・シャークです。ようこそオルカ国へ。我が花嫁殿」

サツキナは片手でドレスを摘まんで片手を胸に当てる。

「初めまして。シンジノア様。私がブラックフォレスト王国の第一皇女、サツキナで御座います」

サツキナも微笑む。

顔の半分下は頭巾で見えない。だがその目は澄んでいて深い知性を感じさせた。ルイスが言った様に背が高く逞しい男だ。ルイスは細身であるが彼はがっしりとして逞しい。

髪は金色。瞳は薄いブラウンだった。



「こちらは?」

シンジノアがカラミス王子を見た。

カラミス王子も美しい礼を返す。

「私はレッドアイランド王国第三皇子カラミス・ブロンテです。この度、サツキナ様を御守りしてオルカ国までやって参りました」

「ほう。レッドアイランドから? 兄上のホラン殿はお元気ですかな?」

シンジノアは尋ねた。

「兄をご存じですか?」

カラミス王子は驚いた。

「ええ。よく存じております」

シンジノアは答えた。

カラミスは嬉しそうに笑った。


シンジノアはサツキナを見るとその手を取り跪いて言った。

「お美しいサツキナ姫。留守にしていて申し訳が無かった。これでも急いで帰って来たのです。今夜は是非私と食事をして頂きたい。そこでゆっくりと語り合いましょう」

シンジノアはそう言うとサツキナの手にキスをした。



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