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ボンド商店のジェームズ

 ジィド辺境伯のカーラ鉱山をさっさと出て来たヨハン達はイエローフォレストの王都を目指していた。カーラ鉱山には仲間がまだ2人残っている。ジョンとアーサーだ。彼等は火種に風を送って火を大きくする役目をする。そして頃合いを見て戻って来るという手はずだ。



「本当ならあのルイス・アクレナイト侯の領地へ紛れ込んで色々と情報を集めたいのだが、俺は面が割れているからな。やめて置こう」

 ヨハンは言った。

「だったら、俺達二人で見て来よう。アクレナイト家は港を持っているから、人が集まりにぎやかだ。紛れ込むには丁度いい」

 国王軍の二人は言った。

「俺は先に国へ帰ってダンテ王や大神官にジィド辺境伯とリエッサのたくらみを伝える。ネオサルト神官はジィド辺境伯を敬虔なゼノン信者だと思っているからかなり驚くだろう。だが、その前にちょっとボンド商店に寄って何か情報が無いかどうか確認して行くよ」

 ヨハンは言った。



 ◇◇◇◇


 からんとドアベルが鳴る。

「よう。ヨハン。久し振りだな」

 帳面を付けていたジェームズは店に入って来たヨハンに声を掛けた。

「ジェームズ、元気そうだな」

 ヨハンは椅子に座る。

 ジェームズは立ち上がって「何がいい?」と聞いた。

「きんきんに冷えたビールが飲みたい」

 ヨハンは答えた。


 イエローフォレスト王都のサイコロ通りの片隅にある「ボンド商店」は生活雑貨を売る小さな店だ。だが、実はその店を経営するジェームズはイエローフォレストの隠れ魔族(新世代)であり、この店はブラックフォレスト王国の秘密諜報活動の一拠点となっている。




「ジィド辺境伯の領地でお家騒動だと?」

 ビールを一口飲んだヨハンは驚いた。

 ラミス殿。早!!



「長男のラミス様が兄弟を唆してジィド辺境伯に隠居を迫ったらしい。遣いガラスがやって来たよ。最新情報だ」

 ジェームズは言った。

「それでどうなった?」

 ヨハンは聞いた。

「ラミス殿とそのご兄弟は結託してジィド辺境伯を塔に閉じ込めたと聞いていたが。その後はどうなったか……」

 ジェームズは言った。

「ジィド辺境伯は敬虔なゼノン教信者だ。ジィド辺境伯を支持する人が多いから、どうなるか……長男のラミス殿にはそれ程の人望は無いからなあ」

「ところがそれが違うんだよ。ジェームズ。ジィド辺境伯とリエッサ王妃はとんでもない事を企んでいたんだ」

 ヨハンはそう言って今までの経緯を話した。



 ◇◇◇◇



 ジィド辺境伯の正体とリエッサ王妃の陰謀をヨハンから聞いたジェームズは怒りにわなわなと震えていた。

「リエッサ王妃はいずれにしろ、俺はジィド辺境伯を立派な人物だと思っていたのに……」

「噂では言う事を聞かない女を閉じ込めて置く檻があるらしいぜ」

 ヨハンがそう言うとジェームズは絶句した。

「仲間にその話を伝えて置いてくれ。リエッサもジィド辺境伯も信用するなとな」

 ヨハンは言った。


 話題は暫く離れていたブラックフォレスト王国の近況に移る。


「サツキナがオルカ国? 何で?」

「オルカ国のシャーク宰相の次男から婚姻の申し込みがあったそうだ」

「ええ?」

 ヨハンは驚く。

「何でまた?」

「詳しい所は知らないが、その何と言ったか、シン? そう、シンジノア、その相手のシンジノア様という男に会いに行った。ヨハンはその男を知っているか?」

「いや、知らない。……オルカ国の事はあまり知らない」

「800万ビルドを結納金でくれるそうだ」

「ええっ?」

 また驚く。

 暫し考える。



「そりゃあ、おかしな話だな……」

「そうだろう?それを確かめにサツキナ姫は自ら行ったらしい」

「だから、何であいつはそういう危険な事をするんだか……。前回の壁を越えた事と言い、お転婆が過ぎる。それを止めないダンテ王は本当にポンコツだな。ロベルトも重臣もポンコツ過ぎる。大丈夫なのか? あの国は」

 ヨハンは呆れた様に言う。

 ジェームズは苦笑いをする。

「気持ちはいいお人達ばかりなのだけれどなあ……」

「気持ちが良いだけでは王は務まらん。それでサツキナはまだ帰って来ないのか?」

「帰って来たと言う話は聞かない」

「ふうっ」とヨハンはため息を吐く。



「先頃、リエッサ王妃がジョージ・アクレナイトとブラックフォレスト王国を尋ねたらしい」

 ジェームズは言った。

「身重の体で?」

 ヨハンは返した。

「そう。何を話に行ったかは分からない。だが、カラミス王子を迎えに来たレッドアイランドのミランダ王女と鉢合わせしてミランダ王女に散々罵倒されたらしいぜ。面白かったらしいと伝えに来た奴が言っていた」

「レッドアイランドから迎えが来たのか?」

「そう。それも大砂漠を横切ってブラヌン川を渡って来たらしい」

「何と!!」

「舟を担いで来たのだ。サンドドラゴンで」

「すごい人達だな……」


「そんな所かな……。そうそう。もうひとつ、ルイス・アクレナイト侯だが、どこかに去った。姿が見えないそうだ。だから御父上のジョージ・アクレナイト侯が兵をまとめて帰って行ったと言っていた」

 ジェームズは言った。





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