阿修羅王 サツキナ
ドアの向こうで何かが激突した。
「うわっ」
見張りは飛び上がって驚いた。
「何事だ!!」
男はがちゃがちゃと鍵を差し込みドアを開ける。
開いたドアから剣がぬっと出て来た。
サツキナは見張りに剣を向ける。
「私の仲間は何処だ? 言わねば殺す」
「何を! 小娘が!!」
男は剣を抜く。だが、元々兵士でも騎士でも無い。ただの商人。
剣でサツキナに勝てる訳が無い。サツキナに剣を叩き落された。
「この、あまァ!」
頭に血が上った男は腕を伸ばしてサツキナの髪を掴もうとした。
「止めなさい!!」
そう叫んで剣を振った。すぱんと男の腕が落ちた。
「ぎゃー!」
男の悲鳴が響き渡る。
サツキナは返り血をドバァと浴びる。
「だから、止めなさいって言ったじゃない!!」
「何の騒ぎだ!?」
船のクルー達がどやどやとやって来る。
廊下の向こうから、どう見ても夜叉にしか見えない(血みどろの角付き。例えて言うなら、綺麗な顔のなまはげ)サツキナが片手に剣を片手に男の襟首を持って歩いて来る。
男は腕を押さえながら泣き叫んでいる。床にだらだらと血の跡が残る。
その姿を見てだれもが息を飲んだ。
廊下がしんとなる。
「ごくり」と唾を飲む音がする。
サツキナは手にした男をどさりと前に投げる。
「早く手当てをしてやれ。……この男の様になりたくなかったら、私の仲間をすぐに開放しろ。そしてカラミス王子をここに連れて来い」
「魔族は常人には無い力がある。この船を沈めてやってもいいのだぞ」
低い声でそう言った阿修羅王サツキナの姿に恐れをなした船員達は、悲鳴を上げて我先に逃げ出す。
「お、おい! おい! 待ってくれ」
腕を切られた男が立ち上がって後を追う。
「おい、鍵!」
サツキナは逃げる男の背中を掴む。
「鍵を寄越せ」
男は片手で衣服から鍵の束を取り出すとサツキナに投げて寄越した。
「仲間は何処だ?」
「し、下の倉庫に閉じ込めてある。く、来るな!このば、化け物!! ひいっ」
ばたばたと走り去る。
廊下は人っ子一人いなくなり、がらんとしてしまった。
サツキナはぽつんとそこに立つ。
「……バカみたい。船を沈めたら私達も沈んでしまうのに……」
サツキナはそう呟いた。




