ルイス・アクレナイト
サツキナ達を乗せた船が出た次の日の朝にオルカ国の船が到着した。
だが、サツキナ達の姿はどこにも無かった。
オルカ国の使者達は訝しく思ったが、陸路が遅れているのだろうと思った。
その日の午後にルイスがやって来た。
ルイスは変装して船に乗り込み、姿をかくしたままサツキナ達と一緒にオルカ国まで行く積りだった。
「アクレナイト侯。サツキナ様達はまだ到着なされていないかと」
使者は言った。
「何だって?」
ルイスは訝しんだ。
「俺は彼らが城を出立するのを見届けてから出て来たのだから、俺よりも早くに着いている筈だが……王都からサスまでの道は一本道だし……」
「ちょっと辺りを見て来る」
ルイスはそう言ってブラックフォレストの商人が経営する宿屋を見に行った。すると宿の主が答えた。
「サツキナ姫様達はもうお出かけになりました。昨日の夕刻です。オルカ国からの船がお迎えに見えて。ええ。馬はウチで預かっていますよ」
ルイスは驚いた。
「オルカ国からの迎えだと?」
「国旗が船に翻っていましたよ。オルカ国とブルーナーガ海上国家の」
宿屋の主人は言った。
ルイスは茫然とした。
一体どう言う事なのだ?
魔族である宿の主人はふと思い出した様に告げた。
「そう言えば船がねえ。どうも商船みたいだったですねえ。まあ、商船がお迎えに来たのだろうと思ったのですが、オルカ国の船は良く見るが、あれはあまり見た事のない船でしたねえ」
ルイスは暫し考えた。ある考えが頭に浮かぶ。そしてその足でXYZ商店に向かった。
店は閉まっていたがルイスはドアをどんどんと叩いた。
中から声が聞こえた。
「店は休みだ。暫くは休みだ」
「俺はカラミス王子の使いだ。伝令がある。すぐに開けろ」
ルイスは言った。
「カラミス様の?」
「そうだ」
「やれやれ、今度は何だと言うんだ」
がちゃがちゃと鍵を開ける音がする。ぎいっと扉が開いた。
ルイスは開いた扉に足を突っ込んだ。
店の男は扉を強引に押し開けて入って来た男の顔を見て驚いた。
「アクレナイト侯!」
「そうだ。イエローフォレストのアクレナイトだ。お前に聞きたい事がある。お前がここの主人か?」
アクレナイト家はインディグランド川の対岸を管理している。その名を知らぬ者は誰もいない。
「私はここの主人では有りません。主人は今留守にしております。船旅にでているのです。私は留守を頼まれました」
男はうろたえながら言った。
「お前の主人はどこへ向かった? お前の所で昨日の夕方に船を出しただろう。その船について教えて貰おうか」
ルイスはそう言うと剣をすらりと抜いた。




