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そしてオルカ国へ


 そしてここは謁見の間。



 カラミスの問いに対してルイスは落ち着き払って言った。

「カラミス王子。あなたはご存じ無い。シャーク宰相の実の息子です。その息子は生まれてすぐに知り合いの貴族に養子に出されたのです。成人を過ぎて息子が帰って来たのです」

「そうなのか? そんな話は初めて聞いた」

 カラミス王子はホンマかいなという顔で聞いている。



「私はその方と大変親しいのだ。嘘だと思うならそこにいる使者に尋ねれば良い」

 ルイスは言った。機嫌を損ねたらしくむっとした顔をしている。

 ダンテ王は使者に尋ねた。

「そうなのか?」

 使者は答えた。

「アクレナイト侯の仰る通りです」

「でも、その話はちょっと信じ難い」

 カラミス王子が呟いた。

「宰相が実子を養子に出すだろうか? それはその子には何か不都合があったのですか? 」

「あなたに答える必要は無い」

 ルイスはむすりとして言った。



「サツキナ王女。これはちゃんと信用の置ける人間がそのシンジノア殿を確認した方が……」

 カラミスが言ったその言葉を遮ってサツキナは言った。

「私が行きます」

「えっ?」

「だから、私がそのシンジノア様に会いに行きます。そして婚姻を決めて来ます」

「ええっ?」

 皆がサツキナを見た。

「分かりました。ならば私がサツキナ姫に同行します」

 ルイスはそう言った。


「ええっ?」

 今度は皆がルイスを見る。

「私なら彼も知っているし、ブルーナーガの国々も知っている。私と旅をすれば安全だ」

「何を言っている! どこが安全なんだ!? あなたはリエッサの婚約者だろうが! リエッサ王妃のスパイだ!」

 カラミス王子が言った。

「それに、あなたには全く関係の無い話だ。これはブラックフォレスト王国とシャーク宰相の話なのだから」

 何をとんちんかんな事を言っているのだ。この男は。

 カラミス王子はちっと舌打ちして呟く。



「ダンテ王、サツキナ姫。アクレナイト侯と一緒に旅をしたらイエローフォレスト王国に拉致されてしまいます。絶対に危険です。おやめください。……だから、私が御一緒いたします」

「ええっ?」

 今度は皆がカラミスを見る。

「だが、あなたはもうそろそろ母国にお帰りに……」

「いや、いい機会です。サツキナ姫と一緒にオルカ国へ寄って、それでそのシンジノア様とやらを一緒に確認します。その足で国へ帰るとしましょう。私はサツキナ王女に命を助けて頂きました。その恩返しがしたいのです」

 カラミスは言った。



 ルイス・アクレナイトはカラミスを見る。

「あなたが安心だと言う保証はどこにも無い」

 ぼそりとそう言った。

「はっ(笑)。少なくともあなたよりは安心だ」

 カラミスは蔑んだ目で見る。



「私はカラミス王子と伴に行きます。だってルイス様はリエッサ様の婚約者じゃ無いの。何を馬鹿な事を言っているの。あなたと旅行などしたらリエッサ王妃に殺されます」

 サツキナはそう言って冷たい目でルイスを見た。


ルイスは少し傷付いた顔をしていたが静かに返した。

「……サツキナ王女がそう仰るのなら仕方が無い。私は引き下がります。カラミス殿。ブルーナーガまでの道中、サツキナ姫を宜しくお願い致します」

 ルイスはそう言って「ざまあ」と言わんばかりの表情で自分を見るカラミス王子に頭を下げた。


「それでは私は先に国へ帰り、サツキナ姫が自らお越しくださることを我が主に伝えます。お迎えの船をブラックフォレスト王国の一番南の港であるサスにお届け致します。サスの港でお待ちください」

 ブルーナーガの使者はそう言って頭を下げるとそそくさと部屋を出て行った。



 ◇◇◇◇



 5日後、サツキナとカラミス王子、それとオダッチと他従者5名が旅立った。

 サスの港町まで馬で行くのだ。サスまでは馬で5日程掛かる。


 サツキナは乗馬服を着てルーベルに跨る。

 途中での宿や替えの馬などを手配する従者はもう出ていた。

 サツキナ一行の馬にはシャーク宰相への手土産などの荷も積まれていた。


 サツキナとカラミス王子の出立をダンテ王や城の重鎮達は見送った。イエローフォレスト王国の兵達も見送る。ルイスは離れた場所で彼等を見ていた。

サツキナはルイスの姿を見付けると目礼をした。ルイスも頷き返した。

 一行が去って行く。



「あのお姫様。乗馬の腕は中々らしい」

「先頭を走っていたぞ」

 そんな声が聞こえた。

「ズボンを穿いて髪を束ねるとまるで凛々しい少年の様だな」

「前回の森番の時の事と言い、ちょっと俺、ファンになっちゃったかも」

「国を思う気持ちに溢れているなあ」

「それに可愛いし」

「魔族と言いながら凛として威厳に満ちているしな」

「俺は魔族に対するイメージが変わって来たな」

 サツキナを褒め称える言葉が聞こえて来る。

 ルイスはサツキナの姿が見えなくなるまでそこに佇んでいた。



 ルイスは自分のテントで暫く考え込んでいた。

 副隊長のガジールがやって来た。

「アクレナイト侯。お呼びですか?」

 ガジールの声にルイスは言った。

「船が来たなら金を積んで先に帰れ。俺はブルーナーガに用がある。リエッサ王妃にはその様に伝えよ。それでこの手紙だが、父上に至急に届けて欲しい。フィリップに頼んでくれ」

 そう言って書簡を手渡す。


 ガジールは呆れた顔でルイスを見た。

「結婚式は3ケ月先ですよ。それまで待てないっすかね」

「うるさい」

「リエッサ王妃に雷を落とされますよ」

「……」

「スズメバチの毒針で刺されますよ」

「大丈夫だ。何とかなる。それにサツキナ王女が行くのなら行かぬ訳にもいかぬ。カラミス王子め。余計な事を言いおった。憎らしい奴よ」

「俺は知りませんからね。気を付けて行ってきてくださいよ。赤毛野郎とスズメバチに殺されない様にしてくださいよ。アクレナイト侯に何かがあったら俺が御父上に殺されちまう」

 ガジールはそう言った。



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