第89話 魔人王
魔人の寿命は通常の人間より長い。
とは言え物語に出てくる長命族ほどでも無い。
大体150〜200と言ったところだ。
現在魔人王は220歳。
通常の寿命を大分オーバーして居る。
基本魔人は普通には衰えない。
活動期間は長いのだ。
死亡する一年ほど前から少しづつ衰えていき、そして一年ほどで死亡する。
その衰える時期に入ったと諜報からの連絡があったのだ。
『破壊の衝動』の制御が次の王に引き継がれるかは分からない。
しかし、すでに魔人王衰えの影響は出て居るのだ。
野良魔人の襲来の増加がそれを物語って居た。
本来野良魔人は同じ大陸の南に向けて侵攻する。
しかし、トーレス王国のの北の端は魔人国からかなり近い位置にある。
その為一定数の野良魔人がトーレス王国に流れて来るのだ。
野良魔人は年間100人ほど出るのだが、トーレス王国に流れて来るのは大体1割、10人程だ。
しかし、今年に入って半年で12人、既に例年の一年の数を超えて居る。
これを魔人王の衰えの所為だとするのなら、制御が後人に引き継がれないと見るのが普通だろう。
後継者が魔人王になってから再発動すると言う可能性もあるがそれを期待するのは楽観的すぎる。
魔人王が死んだら『破壊の衝動』は解放されると思って動く方が確実だろう。
しかもボーヤン帝国はそれさえ利用しようとして居る。
『どんだけ殺意が高いんだよ。』
俺は内心愚痴を言った。
正直、トーレス王国を落とすことは自殺行為で有る。
折角有る魔人国からの壁を消し去ってしまう事だからだ。
魔人に対する何か手段があるのか、それとも自国を犠牲にしてもトーレス王国を潰したい程の怨みがあるのか?
俺には後者に思えて仕方が無いのだが……
その怨みが魂に刻まれる事情についてもある程度理解しているので同情はするが現代を生きる俺たちには迷惑なだけなので抗わさせて貰おう。
「どうやらボーヤン帝国は魔人国さえも利用しようとして居るみたいですね。」
俺の言葉に王は遠くを見つめて呟く。
「愚かな事だ。」
「ともかくルアシーンを取り戻したら反撃に出る。よろしく頼むよ。」
俺の言葉に王はニヤッと笑って
「本来の口調の様だな。分かった、しかしこちらはどうする?」
王様の問いに俺は幾つかのアーティファクトをテーブルの上に置く。
「これは敵の使って居たアーティファクトを解析して逆用した装置だ。これを装備するとその周囲30メートルは王国の土地となる。つまり制約を解かなくてもどこでも行動できる。」
「三つ有るのでここぞと言うときに使用してくれ。」
そして俺は王様にスマホを渡す。
「俺に連絡できるアーティファクトだ。用事が有ったらこれで頼む。こちらからもこれで連絡する。」
そして俺は王宮から離れた。
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とにー




