第88話 王と謁見
「ほう。」
感嘆の声を上げる国王。
しかし、さして驚きはない様だ。
「あまり驚きではない様で?」
「お主には何かあるとは思って居たよ、しかし召喚勇者か、何故他の者と一緒に現れなかった?」
「それには少し複雑な事情が有りますね。言うてみれば神様の失敗と言うやつです。」
「なるほどな、では神様には会ったのか?」
「神様と言うのかは分かりませんがそれらしき者と、会ったと言うより声が聞こえただけですが。」
「もしかして召喚された魔法陣はワルフェアの東の神殿か?」
「そうですね。」
「と言うことは制約は掛かっておらんのだな。」
「知ってましたか。」
「お主が王になるのなら制約を外す儀式は要らんな。」
トーレス王国ではSランク冒険者は制約を外される。
国外での行動が必要になる役職と言うのも確かではある。
このことを知って居るのは上層部の僅かであるが、公然の秘密で有る。
勿論普通の平民にはSランク冒険者は特別なのだな位の認識では有るが。
トーレス王国の国王となるには覚醒勇者で有る必要がある。
王家で覚醒勇者が出れば基本的には世襲される。
王家には覚醒勇者が出やすいバフが掛かるのだがそれでも出ない時は出ない。
斯くいう今の王も一世と名がつくように別の血筋だ。
前王の一族に覚醒勇者が出なかったのである。
「ははは。」
軽口を言う王に俺は乾いた笑いで返した。
「さて、お主の秘密はあくまで前置きであろう、本題を話すが良い。」
「それでは単刀直入に言います。ルナを手に入れました。」
「何と!」
これには流石に王も驚きを隠せない。
「そしてルアシーンを取り戻す算段が付きました。」
「そこまでもか……。」
「後少ししましたら実行に移します。ルアシーンを取り戻したらボーヤン帝国への反攻を実施しましょう。」
「その手筈はどうするのだ?Cランク冒険者は攻め入ることはできないぞ。」
「私には制約を解く方法が有りますが……あえてこれ以上それをすることは無いでしょう。」
「私の戦力だけでボーヤン帝国を押し込みます。」
「それに……そろそろボーヤンばかりを相手にして居る場合では無くなるでしょう。」
「うっ!」
俺の言葉に動揺する王。
「それを知って居るのか?」
狼狽する王に俺は答える。
「ええ知って居ます、今代の魔人王の寿命が切れそうと言うことは。」
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