第80話 クーデター
騎士団がクスーラゥの周りに近寄ってくる。
どうやらクスーラゥを王女様と間違えている様だ。
俺はこの状況になって、どうしようか考えていた。
一つはクスーラゥに王女のフリをさせてとりあえずこの場を凌ぐ。
王城は占拠されているだろうからどこか拠点に行くことになるだろう。そこで説明しても良いし本物と交代しても良い。
欠点は、そもそもクスーラゥは演技が得意じゃ無いし状況もわからない。メンタルが弱いので即座にバレたらリカバーは難しくなる。
二つ目に、この場で人違いだと説明する。
解ってくれれば取り敢えずこの場は立ち去ることが出来る。
ただこれも信じてくれない可能性が高い。
騎士団に頭の回る奴がいれば例え偽物でも利用しようとするかもしれない。
後クスーラゥの事情を説明する必要もあるかもしれない。
俺は、これらを思考加速で0.5秒で考えて三つ目の選択肢を実行した。
ロングジャンプ
俺はその場から消え去った。
執務室で俺はデバイスを見ながら考えていると、
「ススムが逃げ出すなんてね。」
クスーラゥに煽られた。
お前が春花くらい機転が効いたら、ミーリスくらい度胸があったら、イヴくらい演技力が有ったら、こんな事には……
やめよう。
今回は俺のミスだ。
クスーラゥの煽りくらい甘んじて受けよう。
「と、言うわけで紹介しよう。クスーラゥ、お前の従姉妹のユーリアゥだ。」
「よろしくお願いします、クスーラゥお姉様。」
「えっ、えっ。」
突然のことに混乱するクスーラゥ。
相変わらずハートが弱いな……
クスーラゥの母サースラゥは公爵家の出だった。
そしてサースラゥには双子の妹のラステゥが居た。
その妹は国交のあったドーワス王国の王家に嫁いだと言うわけだ。
俺は帰ってきた後情報収集をした。
着いた時点で忍者を10人ほど放っては居た。
それ以外でも資料を確認したし、ユーリアゥの情報も確認した。
それで解ったのは今回の政変と言うかクーデターだな。
公爵家と冷遇された軍部で起こした様だ。
現在ドーワス王国は隣国のタグシス共和国とのいざこざが絶えない。
その時も国境線で正規軍同士が睨み合って居た。
その隙に残されて居た閑職の将軍と冷遇されて居た公爵との間で実行されたのだ。
そしてこれを画策したのはタグシス共和国だ。
当初の計画ではクーデターを起こし、それで慌てて撤退する正規軍を襲い、さらに王都から出たクーデター軍とで挟み撃ちをして大勝利と言う絵だったが、クーデターに参加する兵が思ったより多くなく、王宮を占拠する程度に止まったのと、撤退と見せかけた反抗の策にタグシス軍が見事にハマり、大ダメージを受け撤退した事で、姫を人質にして留まると言う状況になったのである。
奴隷契約もして逃さない様にしたのだが、まさかそれが裏目に出るとは思いもしなかっただろう。
俺は煽られた仕返しも済んだので、一度姫にアイテムボックスに戻ってもらって、再度ポランの街に転移した。
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とにー




