第79話 港町ポラン
「ハロイドさん、来ませんね。」
俺の隣でミーリスが呟く。
「確かに。何かあったか?」
俺は疑問を口にする。
その時だった。
「見つけたぞ!」
何やら大きな声が聞こえる。
「あっちに逃げたぞ!」
「構わん、矢を射て!」
矢を射るとは物騒な話だ。
しかし、その声はだんだん近づいてくる。
「シールドだと!魔道具でも持って居たか?」
「奴隷商人はまだか?契約はしてあるはずだが?」
そしてここに走ってくるのは、クスーラゥとカーバンクルだった。
「助けて、ススム!」
そう言いながら抱きついてくるクスーラゥを受け止める。
「一体どうした?」
流石の俺も状況が読めない。
周りを囲む衛兵達に問いかける。
「その女は罪人だ。こちらに引き渡せ。それともお前が手引きしたのか?」
隊長らしき男がススムに向かって言い放つ。
俺は一瞬考える。
クスーラゥが何かをしたと言うのは考え辛い。
考えられるのは人違いだが……
そこまで来て昨日の事を思い出した。
時は遡る
船上にて三日目の夜大陸まで100キロを切った辺り、俺はデバイスを確認した。
オンラインショップでこの世界の物も買えるのだがそれには実は制限がある。
自分の行った事のある国の物しか買えないのだ。
トーレス王国にいた俺はトーレス王国で売っている商品は買えたのだがボーヤン帝国の商品は買えない。
しかし今回ボーヤン帝国を横断した事でボーヤン帝国の物も購入できる様に成った。
そしてこの国についたと言う条件だが領有権を主張している場所までと言う事になる。
ここの海の100キロほどはドーワス王国が領有権を主張している。
勿論国境を接している国同士の主張が重なった場合は微妙だがこの海域はドーワス国のみの主張なので問題無い。
俺はドーワス王国でどんな物が売っているかと確認をした。
その際につい、いつもの調子でお薦めにあった奴隷を購入してしまったのである。
後悔はして居ない。
もう少し熟考するべきだったと反省はしているが……
熟考して居ても買う事には変わらなかったがこの騒ぎになる事は無かっただろう。
そこに売られて居た奴隷の王女様はクスーラゥと瓜二つだった。
俺達は衛兵と睨み合う。
俺は人違いだと隊長に説こうとしたのだが、乱入者が現れた。
「姫様を救え!」
鎧を着た一団が流れ込んできた。
同じ国の騎士団同士での斬り合いが始まる。
後から来た方は正式な騎士団で、先に居たのは単なる衛兵の様だ。
あっという間に先の衛兵が斬り伏せられる。
どうやらこの国でも内乱が起きている様だ。
昨日はお酒を飲みすぎて、情報収集を怠った事を本気で反省した。
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