第74話 覚醒勇者
閃光と爆炎が治った後、俺たちは普通に立っていた。
あの程度の魔力が込められた魔法石でカーバンクルの7レベルのシールドが破れる筈も無い。
俺は何事も無かった様にグランデンに尋ねる。
「貴方はルナをどうするのか?」
「ルナ?ルナはどうなっているのか?」
「無事だよ。今の所はな。」
「ふむ、あれからどの位経っているのかね。」
「貴方の言うアレがいつかは判らないが、ルアシーンが落とされてから十四年だ。」
「ふむ、と言うことは私が貶められてから十年か……帝国はどうしている?」
「帝国はあれから幾つか国を落として今トーレス王国と戦争中だ。」
「そうか、遂にトーレス王国との戦争になったのだな。」
俺は今の台詞に違和感を持った。それじゃぁまるで……
「トーレス王国がボーヤン帝国の目的だったと?」
俺の言葉に、少し考えた後グランデンは、答えることなく聞き返した。
「ところでお主は何者だ?」
成程、それが判らないと話せないような内容か。
「俺はトーレス王国のCランク冒険者だ。」
グランデンは俺の言葉に納得したようにうなづいて言う。
「成程、Cランク冒険者か、それならその強さも納得がいく。」
「覚醒勇者を知っているのか?」
「知っているも何も、私も覚醒勇者だよ。」
もしやとは思っていたが、やはりそうだったのか。
覚醒勇者はトーレス王国内でしか生まれない。これは制約に刻まれているのだが、実は制約の刻まれていない覚醒勇者が居るのだ。
「成程、ボーヤン帝国の上層部、むしろ皇帝がか、覚醒勇者で王国を恨んで居ると。」
「それが解るのかね?」
「ちょっと歴史には詳しくってね。」
「そうか……それで大体会って(合って)いる。」
「貴方は王国を恨んでいないのか?」
「私には特にその感情は無い。理由までは判らないがな。」
俺はイヴ達を見つめると言った。
「一応訂正しておくとその2人は覚醒勇者ではなく召喚勇者だ。」
「またトーレス王国は儀式をしたのだな。」
「ボーヤン帝国の攻勢が強くてな。召喚された方からすれば迷惑な話だ。」
「ふむ……。」
グランデンは考え込む。
俺は今の回答でボーヤン帝国の事が解ってしまった。
そこで俺は再度最初の質問を繰り返す。
「ボーヤン帝国が何故王国を狙うのかは解った。ところで貴方はルナを……いやルアシーンをどうしたいんだ?」
俺の言葉にグランデンは考え込んで答えた。
「ルアシーンに忠義はある。しかし既に忠義を捧げる方も居ない。」
そこで俺はニヤッと笑って答える。
「公女が生きていると言ったら?」
「本当か?しかし王族は全員殺された筈では。」
「第三王妃のサースラゥの娘が生きている。死産と発表されたのはフェイクだ。彼女は家政の子としてトーレス王国に居る。」
「そんな事が……しかし証拠は有るのか?」
「証拠はペンダントが有るらしいが……本人と話してみるか?」
俺はデバイスを取り出してクスーラゥに電話する。
「もしもし、あぁ俺だ。そうだ、ビデオ通話にして……よし。」
そして俺はデバイスのモニターをグランデンに向ける。
「そこに写っているのがサースラゥの娘でクスーラゥだ。」
「こんにちはー、クスーラゥです。」
クスーラゥはビデオ通話に少し緊張しているようだ。
グランデンはそれを見て突然涙を流した。
「サースラゥ様に生き写しです。証拠など無くても解る。私の忠義は貴方に捧げましょう。」
グランデンは深々と頭を下げた。
ーーーーーーーーーー
なんで覚醒勇者が王国を恨んで居るかはまた機会があったら幕間で書きたいと思います。
少しでも面白いと思われましたら、モチベーションにもなりますのでブクマ、評価よろしくお願いします。
とにー




