第62話 パラドックス
「こちらだ。」
俺は自分の部屋の扉を開いてイヴ達を招き入れる。
「あれ、今日は鍵をかけて無いの?」
春花が訝しむ、
春花が何度か俺の部屋に入ろうとしたのは監視カメラでで知っている。
「残念だが今日も掛かってるよ。」
「えっ、今鍵を開けた様子はなかったよね。」
「顔認証だ。」
「えー、ハイテクだー。こんな場所には不釣り合いだー」
不貞腐れた春花を急かして部屋の入る。
部屋の中にはベッドと机、後本棚が有る。
部屋の扉を閉めると微かにカチッと音が鳴る。どうやらオートロックの様だ。
「これからはイヴと春花も入れる様にしておくよ。」
「わーい」
「良いんですか?」
素直に喜ぶ春花と恐縮するイヴ、そんな2人を尻目に俺は本棚に近づく。
そして、一冊の本を横に動かした。
すると本棚がスライドしていきその奥にまた部屋が現れた。
その部屋も整理はされているが明らかに今までの部屋とは様相が違う、ソファーとテーブルは有るがその前にあるのは60インチ程の大型モニターだ。テレビ台の中にはブルーレイプレイヤーらしき機械とネット接続装置が置いてある。
テーブルの上にはコンシュマーゲーム機とコントローラーがある。
棚にはゲームソフトと映像ソフトと漫画が並んでいる。
「靴を脱いで上がってね。」
床は少し高くなっていて靴を脱ぐスペースが有る。
やはり日本人は部屋に入る時は靴を脱ぎたいよな。
部屋に入るとソファーに腰掛けてモニターの電源をつける。
流石に地上波は映らないが、オンラインの物ならなんでも映る。そこにはネット配信のニュースが流れていた。
「俺たちの事、ニュースには成って無いんだよな。」
俺の隣に陣取るのは春花だが、イヴは棚の方に興味があるようで、アニメのソフトを見ていてが「あっ!」と叫んだ。
棚にはイヴ出演のソフトが並んでいたがそのうち一つにイヴは驚いたのだ。
「私、まだこの作品撮り終えていません。」
彼女はそのブルーレイボックスを手に取り演者欄を確認する。
代役を当てられた様子もない。
「やっぱりそうなんだね?」
俺は確認が取れた事で、なんとも言えない気持ちになる。
イヴがここに居て、出演した筈のない作品が出ている。
このパラドックスを紐解くと残酷な事実が現れる。
向こうの世界にも僕たちは居ると……
つまり、僕たちが帰ることは無いのだと。
勿論可能性はある。
戦争が済めば記憶を失って召喚された瞬間に戻されるとか……
だがそれは……
希望的観測でしかなかった。
神様は言った
貴方を戻す力は有りませんと。
そんな力をこちらの世界の人間の都合で、なんとかなるとは思えなかった。
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ススムが、なんとも言えない気持ちなのはあくまでイヴ達を思ってのことで本人的には正直どうでも良いと思ってます。
少しでも面白いと思われましたらモチベーションにも成りますのでブクマ、評価、よろしくお願いします。
とにー




