第60話 イヴと春花
ブルブルブルブル
スマホ型デバイスが振動する。
画面を見ると春花と表示されている。
ブランと遊んでいた俺は手を止める。
「もしもし」
俺が電話に出ると向こうで元気な声が聞こえる
「もしもし、ススムお兄ちゃん。疲れたから迎えに来てよ。」
なんか全く疲れてる様には聞こえないが、俺は了承して迎えに行く。
イヴと春花は今10層で狩り中だ。
9層の亜竜は身体能力を活かした力押しが多かったが、10層の魔物は多彩な攻撃をするものが多い。
亜竜はアースドラゴンに限らず装甲の硬さが有るのでそれを活かした戦い方は春花ととても相性が悪い
春花の剣は装甲を一切苦にしないのだ。
しかし、10層の魔物、例えばモルボルなどは触手をどんどん伸ばしてくる。切られる端から伸ばしてくるので中々厄介だ。
ガルムなど俊敏な動きと各種のブレスで苦しめる
まぁ春花は楽しんでいる様だが付き合っているイヴは大変そうだ。
「お待たせ、イヴ、春花。」
休憩中の2人に転移した俺が声を掛ける。
「あー、イヴお姉ちゃんの方を先に呼んだー。私が連絡したのにー。」
春花は不満そうだが軽くスルーする。
「それでは飛ぶぞ、捕まれ。」
俺がそう言うと春花は左腕に抱きついて、イヴは右腕を掴んだ。
俺はスキルショートジャンプを使った。
ダンジョン内を管理者権限で飛び回っていたら身についたスキルだ。距離は5キロと短いが行ったところに一瞬で行けるスキルだ。
接触していれば他人も飛ばせるので結構便利だ。
着いた場所は俺の執務室だ。
俺は彼女達をソファーに座らせると、俺も対面のソファーに座った。
「ススムさん、お仕事じゃ無いんですか?」
訝しむイヴに俺は答える。
「いや、そろそろ良いかなと思ってな。春花、何か聞きたいことがあるんじゃ無いか?」
「はーい、はーい、ススムお兄ちゃんって転移者なの?」
「どうしてそう思う?」
気持ち良いくらい直球で聞いてくる春花に、俺は少し勿体ぶる。
「だってお兄ちゃんなんにも隠して無いじゃん、車とかスマホとか。アイテムはまだアーティファクトって言えるかもしれないけどLIN○はちょっと……極め付けは『もしもし』だよ。そんな電話の出方する異世界人居ないよ!」
捲し立てる春花と、隣で驚いてるイヴ、俺は静かに聴くと少し躊躇い気味に答える。
「その返事をする前に、2人に少し頼みがある。」
俺は2人を見つめ直して告げる。
「一度俺の奴隷になってくれないか?」
「どう言うことですか?」
イヴの台詞だ。
言葉は丁寧だが、まるで裏切られた様な侮蔑の意図が見える。
春花は何か考えている様で言葉は発しなかった。
俺は穏やかに話を続ける。
「君達だが制約を掛けられている。君達が召喚された魔法陣によるものだ。それによって王宮には逆らえないし言うことを否定することも出来ない。」
俺の言葉にイヴは驚いてはいるがなんとなく理解はしていた様だ。
その隣で春花が口を開いた。
「お兄ちゃんがその制約を外してくれるって事?」
「そうだ、制約を解くために一度俺のスキル『オンラインショップ』の中に入れる必要がある。それには二つ方法がある。ダンジョンで死ぬか、奴隷として購入されるかだ。」
「そうしたらススムお兄ちゃんの事を教えてくれるの?」
「あぁ、その為の制約解除だ。」
「わかった。私良いよ。」
春花が頷いてくれた。
「解りました。そう言う事でしたら私も構いません。でも……ススムさん、信じてますよ。」
真剣な目でイヴも答えてくれた。
そうしてススムは2人に奴隷魔術をかけた。
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奴隷魔術は抵抗されると発動しません。
勇者達に無理矢理はかけられません
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とにー




