第301話 スターシャ
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ススムは冒険者に対峙した際、無手を採用した。
これにはススムに少し思うところが有ったからだ。
それは昨日列車の中で読んでいた漫画にあった。
異世界転生した主人公がギルドに持ち込んだ素材によって高額の収入を得ることになった要因で同じ様に悪辣な冒険者に絡まれるシーンが有ったのだ。
主人公はチートを持っていて、チンピラは簡単に撃退するのだが、明らかに殺しに来てるのに命乞いされてあっさり見逃す。
ススムには甘く見えて仕方が無かった。
そしてこの後の展開も凡そ推測がつく。
案の定逆恨みを受けて知り合いの冒険者が犠牲になり、大事な人が攫われるという事態を巻き起こす。
正直ススムには愚かとしか思えなかった。
勿論作り物と理解はしているが自分ならどうだろうと思ってしまった。
自分なら寧ろわざと見逃してその上で絶対に仕返しなどできない状況を作り出す。
その位の事が出来なければ見逃すべきでは無い。
それを実践してみようかと今回殺さない様に無手での戦闘にしたのだ。
しかもこの主人公は異世界で誰にも干渉されないスローライフを求めていたのだ。
ススムは思う。
誰にも干渉されたくなければ。
干渉出来る人を無くして仕舞えばいい。
要は自分が一番偉くなって仕舞えば誰も干渉できなくなる。
スローライフなどそれからゆっくりすればいい。
そんな事を考えながらススムは魔人二人と向き合って居た。
魔人達の攻撃は苛烈を極める。
おそらくはススムにスキルを使う余裕を与えない為だ。
しかし、ススムも防御に徹すればそう簡単に追いつけられたりしない。
それでも盤上は少しづつ魔人達の方に傾いて居た。
しかし……
突然ザーギスの動きが鈍る。
まるでザーギスの周りだけ重力が何倍にでもなったかの様に。
「くそっ!何かしやがったか?」
ザーギスが間合いをとると同時にグギャールも手を動かして体に掛かる負担を確認する。
「どうやら重力操作か?しかし、この程度なら問題無い。」
そう言ってススムに向き合うがその時、ススムの後ろ、大通りの方角から一人の女性が現れた。
「ススム様、お待たせいたしました。」
「いや、今来たところだ。」
「ふふふ、デートの待ち合わせだったら正解ですね。」
「スターシャ、女を待つのは男の甲斐性だ。」
「ススム様……有難うございます。後はお待たせ下さい。しかし、流石は魔人兵五倍程度の重力ではさ程堪えませんか?」
「何者だ!?」」
突然の闖入者にグギャールが怒鳴る。
実はこの場所にはグギャールが結界を張って居たのだ。
その中に彼に気が付かれない様に侵入して来るのはどう見ても看過出来ないのだ。
「私は星影、ススム様からはスターシャと呼ばれて居ます。今からあなた達のお相手を致しますわ。」
スターシャは濃紺に光り輝く宝石を散らばめたドレスを着ていた。
その様は名前の通り夜空に輝く星を模している様でとても似合っているのだがこの戦いの場には不似合いでは有る。
ススムの前に出て来たスターシャにグギャールは攻撃を仕掛けた。
グギャールはスターシャを強敵と判断したのだ。
そういう点では相手が女と見て躊躇したザーギスとは感性が違う。
相手の容姿に影響されない判断力はやはり魔人兵と言えるのだ。
しかし彼女は優雅にその身を翻した。
その結果グギャールの攻撃はスターシャを大きく外す事になる。
スターシャ自身はそこから一歩も動いて居ないのにで有る。スターシャは優雅に微笑み二人に向けてドッジボールサイズの魔力の球を放出する。
魔人の二人はなんとかそれを避ける。
その球は地面や壁に当たるとをの場所は沈没する。
その球の中の重力は何十倍に成っているのだ。
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とにー




