第297話 車窓
ススムが寛いでいると列車が動き出す。
魔導エンジンはかなり静かで振動も殆ど無い。
挙動も滑らかでかなりの快適さを担保して居た。
駅周辺は流石に首都だけあって建造物が密集しているが、街から一歩出ると豊かな自然が有り車窓から見る景色は中々爽快だ。
列車は地面を走っているが、線路の高さも相まって少し高い位置から景色を見ることができる。
普通車やヘリからの眺めとは一味違うのだ。
安全面が気になって少し調べてみたが、防衛設備はかなりしっかりしているようだ。
それにこの世界の魔物はあまり自分のテリトリーから出てこない。
盗賊団もザイン皇国肝入りで開発されたこの列車を襲うことは無いそうだ。
大きな盗賊団ほど国を敵には回したく無いようでたまに食い詰めた小規模な襲撃は有るそうだが簡単に撃退してしまうらしい。
まぁ俺が乗っている以上更に安全では有るのだがな……
ススムは車窓から森や川などの自然の景色を眺め、今度仕事じゃ無い時にイヴやブランなどを連れて来てあげたいななどと考えて居た。
まぁ春花も連れて来ないと拗ねそうでは有るが……
一頻りゆっくりした後ススムはアイテムボックスからオンラインショップで購入した漫画の単行本を取り出す。
タイトルは最近流行りの異世界転移ものだ。
異世界で異世界転移のコミックを読むと言うのも中々シュールだなと思ったススムだった。
そうこうしていると日が落ちてくる。
車窓から見える夕焼けがとても綺麗だ。
最近ワルフェアの都市の中やダンジョンの中などが多かった為ついぞ夕焼けなど見ることも無かったので車窓から見る夕焼けに少し感動した。
そして日が落ちると周りは闇に包まれる。
俺は一応警戒のためカーバンクルを呼び出し部屋に結界を張ってから就寝した。
次の日の朝
列車は次の駅に到着した。
隣国のバジニリア王国の首都だ。
ここで1日半ほど停車して貨物の積み下ろしや機械のメンテナンスが行われるようだ。
出発は明日の昼になる。
この列車は治外法権になる為駅から出るには入国審査が必要となる。
俺は入国審査を受けて駅の外に出た。
まぁギルドカードを見せるだけなのだが……
トーレス王国のSランク冒険者のギルドカードは基本的にほぼどの国に行ってもフローバスだ。
そして俺は王都の冒険者ギルドに向かう。
そこで人と待ち合わせがあるからだ。
朝方と言うことも有りギルドは結構賑わって居た。
俺がギルドに入ってもそれほど注目は受けない。
とは言え若い男が武装もせずに一人でギルドに入ってくることは少し珍しいのだろう、ススムのイケメンさも相まってそれなりに注視する者は居た。
入って来たススムに話しかけたのは妙齢の女性だった。
赤い髪を短めに切っている少し気の強そうな女だ。
「お兄さん見ない顔だね、冒険者登録かい?」
ススムの年齢や、傷一つない綺麗な顔を見てこれから冒険者を志す新人とでも思ったのだろう。
「シェリー、いい男と見たら早速粉掛けかい。」
近くに座って居た男性から揶揄の声が出る。
「うるさい、新人には優しくしないとね。」
「但しイケメンに限る。だろ。」
シェリーは揶揄った男性を睨みつけるとススムに話しかける。
「あんた名前はなんと言うんだい?私はシェリーさ。」
「俺はススムだ。残念ながら冒険者登録じゃぁ無いな。ここには人と待ち合わせ出来た。」
「へぇ、そうなんだ、
ここには長く滞在するのかい?」
「いや、ザイン皇国に向かう列車で来たからここには一泊だけだ。」
ススムがそう言った瞬間周りの雰囲気が少し変わった。
ススムはそれを当然感じ取って居た。
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とにー




