第286話 突入
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パンデモニウム内にファイルーンを突入させると襲ってきたのは触手だった。
しかし、明らかにその勢いは落ちている。
ススムは触手を処理しながらファイルーンをヤタノカガミで開けた穴の中に進ませる。
パンデモニウムを維持するための魂の量か減っているのだろう……
触手が回復できて居ない。
ススムは正面にある壁に攻撃をするとそこに大穴が開く。
既に外壁の修復でさえ難しくなっている様だ。
ススムはファイルーンでその穴を潜るとそこは大きなフロアになって居て幾つかの扉がある。
そこは既に触手の影響は無いようだ。
ススムはここで一瞬考える。
このままファイルーンで進むか、それとも……
一瞬の逡巡後ススムはファイルーンのコックピットを開ける。
そしてそのまま空中に身を投げ出した。
「くうーーーっ」
皇帝は自室に有る座席……言ってみればパンデモニウムのコックピットで呻き声をあげて居た。
その苦しげな声は失った魂を惜しむ様で有った。
「くそっ!」
まさかの事態に悪態までついてしまう。
溜め込んでいた魂は既に四桁を割っている。
これではパンデモニウムを維持することさえままならない。
そして……
パンデモニウム内の魂達が皇帝に来訪者の侵入を告げる。
それは明らかにこの場所に向かって来ていた。
「来るか?」
ヘッドセットをつけたまま天井を仰ぎ見るように上を向いた皇帝は呟く。
「ススムリセイ……どこまでも邪魔な奴。直接相対するしか無いか……」
そうしてボーヤン帝国皇帝、エドワース・ボーヤンはヘッドセットを外す。
「私、自ら葬ってやろう。」
元々皇帝は自ら前線に出ることを好んでいた。
かなり好戦的な性格なのだ。
皇帝は椅子から立ち上がると歩き出す。
そして部屋から出ていく。
その顔は獰猛な獣の様に歪んだ笑みを浮かべていた……
ススムはファイルーンから飛び降りると綺麗に着地する。
そして幾つか有る扉の中から中央の扉を選んで開けて中に入っていく。
そこは開けた会議室の様な広い部屋だった。
周りを見回すススム。
「ここは……まだ人の気配が残っているな……」
誰も居ない机と椅子だけが有る部屋ではあるが椅子の位置は先ほどまで誰か座っていた者が多数居た事を示す様に乱れている。
魂に関しては確かに帝国皇帝は専門家ではあるがススムとてデバイスで何度も扱っている。
皇帝ほどではないが魂の感覚を掴むことは慣れていた。
本来なら死体がある筈だがパンデモニウムに吸収された事は容易に想像できる。
ススムはその部屋で向かい側にある扉を見つめる。
その向こう側がら来る気配を察していたのだ。
「コツ、コツ、コツ」
足音が響き……そして止まった。
扉を開いて入って来たのは皇帝エドワースだった。
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とにー




