第282話 撤退
ススムはファイルーンの中で皇宮殿の様子を見て居た。
「成程、これが皇帝の切り札か………まぁ大体予想はできて居たが………」
ススムは先日の雲影からの連絡を思い出す。
魔人兵が逃げ出した後も見張らせて居た雲影からの報告に怪しい一団の帝都からの退出が有ったのだ。
馬車の中に数人の女性と子供。
身なりはそれほど裕福そうではない、護衛をしている者も冒険者の様だ。
それは一見、一般民衆の避難のように見えるのだが……
雲影の目は誤魔化せない。
女性の所作や綺麗な指先を見て高貴な身分で有る事が察せられる。
大人しくしている子供達も躾の良さを隠せない。
冒険者然としている護衛も防具の取ってつけた感と武具の質の良さと使い込まれた感がアンバランスだ。
防具のランクは落とせても武器は使い慣れたものでないと安心出来ないのであろう。
普通はそこまで見る者は居ないので有る。
その報告を聞いてススムはその一団が皇帝の奥や子女だと判断する。
そしてそこから皇帝の取る手段も大凡分かってしまう。
「流石に家族を吸収するほど非道では無かったか……」
皇帝はこの皇宮殿にいる者を全員吸収してそれを生贄に大規模な儀式を行おうとしている。
それが今自分が感じている振動で有り、地面から迫り上がってくる皇宮殿の建物自体だ。
その壁や柱などには血管の様なものが浮かび上がっている。
地面から出てくる部分には木の根の様な物が剥き出て、それが触手のように動いている。
「フッ」
一瞬の気配を感じ、ススムはファイルーンを空中に浮かす。
すると今までファイルーンが居た場所にその触手が殺到した。
おそらくシールドで防げるとは思うが油断は出来ない。
この手のものはシールドに接続したりシールドごと吸収しようとするからだ。
それと同時にススムはタイタンに連絡をする。
「撤退だ!国境線まで全力で後退せよ。」
「作戦は失敗でしょうか?」
シグワスが確認の為に尋ねるが本当にそう思っているわけでは無い。
ただ全軍撤退は少し予想外だった様だ。
「作戦は今のところ順調だ。最終局面は予定通り俺だけでやる。」
「了解しました。」
早速撤退命令を全軍に出すシグワス。
アパッチやヒトマルシキなどの兵器や、占領の為に控えて居た兵なども迅速に撤退していく。
そうして戦いは最終局面に移行した。
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