第269話 対策
いつも誤字報告ありがとうございます。
少しペースが上がるといいかなと思っています。
帝国の対機械兵用の電磁波発生兵器、通称サンダーボルトはなかなか厄介な兵器だった。
その発生する電磁波のせいで接近戦は通じない上に普通の長距離兵器はその威力を弱められてしまう。
ミサイルの系統は着弾前に爆発してしまうし、通常砲弾は射線が歪められて結界に阻まれる事になる。
10式の主砲や対戦車ライフルなども通用しないのだ。
魔法なども難しい。
直線で飛ぶ高速呪文と言うと雷撃系の魔法が思いつくがこれは電磁波に散らされる。
電磁波の影響を受けにくいとなれば土属性の魔法だが射程やスピードに劣る物が多くランクの高いメテオ系は精度に欠ける。
ルアシーン軍の首脳部では会議が行われて対策が検討されていた。
春花が言う。
「私が光の翼で接近して切り落とそうか?私のスピードなら問題無く出来ると思うけど……。」
しかしシグワスはそれを肯定はしない。
ススムから命令があるまで勇者の接近戦は禁じられているのだ。
「ススム様から勇者の投入時期は指示がある。今はその時では無い。」
「ともかくススム様に指示を仰ぐのが一番だろう。」
そして、ススムに連絡するとススムからは即座に返信があった。
「既に対策は取った。」と。
その時だった。
レーダーを確認している兵から声が上がる。
「空中から接近する物体があります。」
「なんだ!?」
シグワスがそれに応える。
「かなりのスピードですが識別コードは青、味方です。」
「ふむ、何方だろうか?」
ススムが取った対策だと言うことは容易に推測がつく。
しかし、主要なメンバーはここにいる以上どんな対策なのかは分からない。
ススム本人だとすればこんなまどろっこしい連絡は寄越さないだろう。
「甲板に上がるぞ。」
そう言いながらエレベーターに入るシグワス。
他のみんなもそれに続く。
現在司令室が置かれているのは全長200メートルは有る陸上戦艦の中だ。
甲板にはヘリを止める為にヘリポートや格納庫があり大きく開けている。
シグワス達がそこにたどり着くと上空から一体のグリフォンが舞い降りた。
そして乗っているのは1人の少女。ワタライ・イヴだ。
イヴはグリフォンから軽やかに飛び降りる。
「イヴお姉ちゃん!」
春花がイヴに抱きつく。
「春花はお利口にしてた?」
「もう、子供扱いして!」
イヴが揶揄すると春花が頬を膨らませる。
「ごめん、ごめん。」
「ススムお兄ちゃんの対策って言うのはイヴお姉ちゃんの事?」
「ええ、やっと完成したから……。」
イブはそう言うと再度グリフォンに飛び乗った。
「それでは敵防御兵器を無力化します。」
イヴはそう言ってグリフォンを上空に躍らせた。
「シルフィー。よろしくね。」
シルフィーと名付けられたグリフォンは「クアッ!」と鳴くと周りに集めた風の力でその位置を固定した。
そしてイヴはシルフィーの上に半立ちになり、右手を前に出すと親指の上にコインを置いた。
そして、少し集中すると、そのコインを弾く。
弾かれたコインは爆音を撒き散らしながらおよそ2キロ先の城壁までほんの数秒で到達する。
その音速を越えようかと言う精密射撃は電磁波発生装置を正確に撃ち抜いた。
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とにー




