第242話 援軍
その日、シーラムの街は騒然としていた。
国境が突破されたと報告が有ったのは二日前。
近隣の町村の民衆は街の中に避難してきた。
王都への救援要請はしたが王宮も混乱しているようだ。
援軍は望み薄だろう。
それに前線のある直近の街はシーラムだけでは無い。
五つほどの街が国境沿いには存在するのだ。
どの都市が狙われるのか?
それが判明しないと援軍を送ることもできない。
シーラムの領主で有るCランク冒険者、ぜナムは街の周りに斥候を送りながら防衛の準備をしていた。
街の広場にはいくつものテントが建ち、避難場として使用されていた。
冒険者ギルドでは冒険者が防衛の準備をしている。
だが、前線を破った敵だ、どの程度抵抗できるのか分からない。
情報によれば前線には二人Cランク冒険者がいたと言う事だ。
都市と言う拠点が有るにしても守り切れるとは思えない。
そんなぜナムの元に敵兵がこちらに向かっているとの斥候からの報告が入る。
ぜナムは結界の発動を決断する。
この都市は国境が近いこともあり万が一のために結界の発生装置が有る。
エネルギーの問題もあり普段は使用していないのだ。
ゼナムは万全の形で迎え撃とうとしていた。
当然最大戦力で有る自分も前線に向かう。
そんな準備をしていた時だった。
ゼナムを尋ねる者があったのだ。
その少女はCランク冒険者を名乗った。
「私はSランク冒険者ススム・リセイの使いのCランク冒険者コトコ・カンナヅキですわ。詳しくはこちらの書状を確認ください。」
そう言って琴子がゼナムに書状を渡す。
ゼナムはそれを受け取ると中を確認する。
「ふむ、何だと!Cランク冒険者に匹敵する兵が30人ほど敵に居るだと……それは防ぎようが無いのでは無いか?」
愕然とするゼナム。
しかし琴子は冷静に告げる。
「その後をお読みください。」
「何と、ススム殿が援軍を送ってくれると。して、援軍はいつ頃届くのか?」
「既に来ております。」
「まさか、お主が援軍だと言うのか?」
そのゼナムの言葉に琴子は微笑む。
「私はただの連絡係ですわ。援軍は既に配置についております。後は指示通り打って出たりせずに籠城を選択するようにお願いします。」
「了解した。元々籠城を選択するつもりだったからな。」
「懸命な判断です。後、斥候もお引きください。」
「指示通りしよう。それで大丈夫なのだな?」
「問題ありません。ススム様の指示ですから。」
自信満々に言う琴子の言葉をゼナムは信用するしか無かった。
街の城壁にある物見塔の上に舞い降りる一匹のグリフォンがいた。
「おい、何だあれ?」
物見塔の兵がそれを見て驚く。
「魔物じゃ無いか?」
「でも誰か乗っているぞ。」
グリフォンはそのまま物見塔に降りてくる。
静かに降りたグリフォンから一人の少女が降りてくる。
その少女は美しく、塔にいた衛兵達が見惚れてしまう。
「私はCランク冒険者のイヴ・ワタライです。援軍として派遣されてきました。」
そう言ったイヴは街の外を見る。
「そろそろ来る頃ですね。」
指差した方向を物見兵が望遠鏡で確認すると敵兵団が確認出来る。
「敵兵確認……あれは、魔人!?」
「何人いるんだ?20人以上居るぞ。」
魔人達は街から200メートルと言ったところに着陸する。
そして体制を整えていた。
しかし、それを鋭く見つめるイヴ。
そして、魔力を練り始めた。
彼女は戦いを一瞬で終わらせるために来たのだ。
そして神の裁きとも言えるその魔法は理不尽にも敵陣に放たれることになった。
「サウザンド・ライトニング・ブレイク」
突然現れたその無慈悲な衝撃は雷の奔流と共に全ての存在を破壊尽くすこととなった。
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サウザンド・ライトニング・ブレイクの威力は某サン○ーブレイクの千発分とお考えください。
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とにー




