第238話 人造魔人vs召喚勇者②
前島side
俺は魔力のコントロールに優れているせいか危機感知の性能が他の勇者とは少し違う。
他の勇者はなんと無く感じるだけだと聞いているが俺には視覚的に色で表示されるのだ。
危険度が青から黄色、そして赤まで。
濃淡で割と細かいところまで分かる。
それによるとあそこに居る魔人達は濃いめの黄色。
倒せないことはないが三対二だ。
油断できる敵ではない。
この敵にバラバラで戦うのは得策ではないと判断し、俺はジリジリと大塚との距離を詰めて行った。
「気をつけろ!」
俺が大塚に向かって叫ぶが、俺が近づくのを待たずに大塚が仕掛ける。
「先手必勝だ!」
そう言いながら大塚はスキルを使った。
大塚も伊達に訓練はしていない。
放たれた斬撃は魔人を捉える。
一体の魔人が肩口からパックリと割れて青色の鮮血が飛び散った。
肩の傷を押さえて後ずさる魔人。
残りの二人は左右に展開した。
奇襲は成功したかに見えたが大塚の表情は冴えない。
「チッ、動きの良い人型ってのはこうも上手くいかないもんか……。」
どうやら大塚は次元斬で魔人の眉間を狙ったようだ。
次元斬を初見で交わすのは至難の技だ。
しかし、それをやられてしまった。
いや、もしかしたら先ほどから使っていたのを見られて居たか……。
それでも放たれた次元斬を完全ではないとは言え逸らすというのは並大抵ではない。
まぁそれでも一体は無力化できた。
俺は左に避けた魔人に向けて魔法を唱える。
「コロナブラスター」
俺の合成魔法。
5レベルのストーンブラスターに3レベルのファイアーランスを合成した8レベル魔法。
高速で打ち出された砲丸を炎の槍で囲んで敵を貫く魔法だ。
狙ったのは魔人の土手っ腹だ。
この魔法もそう簡単に避けられる物では無いのだが、実際に当たったのは脇腹だ。
それでも脇腹を三分の一程持って行った。
俺が身体の中心を狙ったのは避けられても損害が与えられる様にだ。
魔人の耐久力はかなり高いと思われるが、脇腹を三分の一失えば致命傷では無いのかもしれないが戦闘継続は無理だろう。
これで二対一。
何とか成るな。
俺がそう思った時だった。
後ろにあった敵の陣地から二体の魔人が飛び出してくる。
そして残った魔人が俺達に攻撃を仕掛けた。
「不可視の斬撃」
そう言われている魔人が放つ衝撃波だ。
斬撃は俺達のシールドを直撃する。
俺はその威力に驚く。
野良魔人の放ったものに比べて遥かに威力が有ることが感じられる。
これでは然程シールドが保たない。
俺は大塚に向けて叫ぶ。
「右の敵に攻撃を集中させろ!」
そう言いながら俺は右の敵に魔法を放つ。
既にスキルを見せている以上そう簡単には致命傷とならないだろう。
ここは同時攻撃で戦力を奪う。
狙い通り同時に放たれた魔法と次元斬の斬撃はとても避けられないタイミングで魔人に命中した、かに思われたが、その魔人の体が振れた様に見えた瞬間その体が別の位置に有った。
「分身だと!?」
すぐ横に現れた事から大したレベルでは無いことは解るが分身はレアなスキルだ。
それを魔人が使用したのは信じられなかった。
そしてまた三対二の構図となった。
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とにー




