第196話 先輩と後輩
俺の問いに彼女は黙ってしまった。
どうやら動揺している様だ。
しかしこうも動揺されると既に回答を貰っているようなものだ。
誤魔化す気が有るのなら惚けるとか、せめて否定するべきなんだが……。
「何故そう思ったか教えておこう。俺が用意した車とか現代兵器を見て君は驚いていたみたいだけど、なんだか解らず驚いたと言う反応では無かったね。君はあれが何だか解っているんじゃ無いかな?」
俺は言葉を続ける。
「そして結構致命的なのは車のドアだ。君は何の気無しに開けたけれど、この世界の人間はあのドアは初見では開けられない。」
彼女は「あぁっ。」と呻く。
俺は最後にこの言葉を掛けてあげる。
「案じなくてもいい、俺も転生者だ。」
その言葉に彼女は驚愕の表情を浮かべる。
いや、車とか兵器とかを俺が用意したと言ったよな。
その時点で有る程度予想して然るべきだと思うんだが……。
もしかしてカミーユと同類か?
俺は少し怪訝な表情を見せるが彼女は何か思いついた様に大きな声をあげた。
「あーーーーー!」
「もしかして本等に先輩ですか!?」
ふむ、昨日から妙に様子が変だったのは前世の俺の知己だったか?
俺の苗字は珍しいからな、多分人間違いと言うことも無いだろう。
俺を先輩と呼ぶと言うことは後輩か……。
学生時代の後輩で親しいと言うと大学時代なら何人かいたが……。
基本俺は学生時代は名前で呼ばれてたんだよな。
俺を先輩と呼ぶ後輩ですぐに思いつくのは昨日ちょっと思い出した茜ちゃんだな。
直属の先輩と言える人物が俺しか居なかったから名前も付けずに先輩、先輩ってついて来てたな。
あの子も頭は良いんだが
クスーラゥやカミーユに通じる所が有ったなぁ。
普通ならまさかと断じるところだが、まさかが起きるのがファンタジーだ。
何に付け確認してみる。
「俺を先輩と呼ぶ君はもしかして茜ちゃんか?」
俺がそう問うと彼女はいきなり泣き出した。
「えーん、グス、せん…ぱい…もこちらに…来てたん…ですね…。」
「あぁそうだ。俺は半分転移だがな。茜は完全な転生の様だな。何が有ったのか落ち着いて話してみろ。」
そして彼女が落ち着くまで15分の時間を要した。
ーーーーーーー
少しでも面白いと思われましたらモチベーションに成りますのでブックマークや評価をよろしくお願いします。
とにー




