第188話 元公爵
女性にそこまで取り乱した様子は無いので、俺は優しく話しかける。
「お父さんは無事だ。今俺のスキルの中に居る。」
一応デバイスで確認してある。
息さえあればじきにデバイスで修復されるだろう。
「そう……ですか。」
女性は少しほっとした様だが俺のことは訝しんでいる。
突然出てきて名乗ってもいないのだ、信用できないのも当然か。
しかしこう言う状況は助けられた方から先に名乗るべきだが……。
まぁ動揺も有るだろうから仕方がない。
俺から名乗ろうかとしたのだが……。
「お助けいただきありがとうございます。私はミーリアと申します。」
女性の方が非礼に気がついたのだろう、お礼と名乗りをしてきた。
「俺はススムだ。助けたのはたまたま通りかかったかからだ、」
「いえいえ、賊があんなに居たのです。お一人なのに助けてくれるなんてなかなか無いことです。所でお父様は本当に無事なのでしょうか?」
なるほど流石にすぐ信用するほどゆるゆるでは無い様だ。
言葉が丁寧なのは俺を刺激しないためだろう。
俺はデバイスを開いて再生したのを確認する。
そして、男性をその場に召喚した。
「この通り。傷も治っているよ。」
傷が治っているのは良いんだが修復機能なので切られた筈の服まで直っているのはご愛嬌だ。
男性は最初は目を瞑っていたが、時期に目を開く。。
そうして周りを見回すとミーリアを見て。
「ミーリア、無事だったか?」
と、安心したように話しかけた。
「お父様、助かって良かったです。こちらのススム様に助けていただきました。」
そうやってミーリアが説明すると男性はススムを見て、
「ススム様、ありがとうございます。モーロスと申します。」
そう礼をした。
その姿を見てミーリアは驚いた。
何故ならモーロスはドーステンの元貴族だ。
しかも公爵というかなり身分の高い貴族であった。
しかし、ボーヤン帝国の侵略に対してかなり早い時期に降伏してしまったのも彼だった。
彼が降ったのが戦争の早期終結に役だったと認められた為、公爵と言う地位でありながら生存が許されたのだが能力の無能さが露見して爵位を剥奪されて閑職に追いやられていたのだ。
その事を普段から愚痴っていて、特に平民には当たりの強かった彼が冒険者然としたススムに謙るとは思えなかったので有る。
そして俺はデバイスを見てその事が分かっているし彼らの事情も分かっている。
彼の名前はモーロス・フェルナンデス。
ドーステン皇国の元公爵だ。
クロウスブルグの北にある元自領で閑職についていたがクロウスブルグが落ちたことで一旗上げられるんじゃ無いかとやってきたと言うわけだ。
事情を知った俺は助けなくても良かったかなとは思ったが既にアイテムボックスに入れているから既に俺の支配下か。
利用できるとともに盗賊自体もどうやら裏がありそうだ。
色々忙しくなるなと考えたのだった。
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とにー




