第183話 ススムの考察
俺は先日の盗賊騒ぎから帝国の狙いの考察をしていた。
忍者を散らばせていろいろ探ってみるといくつかの工作が見受けられる。
その内一つ二つもう少し時間を掛ければ結実しそうな工作もあった事に着目した。
この手の策は1箇所でやるより何ヶ所か同時に発動した方が成功率は高いはずだ……。
それを貴重なアーティファクトまで使って拙速とも言える形で実行したのはなにか有るとしか思えない。
俺は帝国にもかなりの忍者を放っている。
そこから送られてくる情報を精査すると一つ気になる部分が出てきた。
帝国は昔から大大陸と貿易を行ってきた。
しかし帝国と大大陸との行き来はルナの様に安全で速いものでは無い。
それと文化自体はそこまでこの大陸と大大陸の間に差があるわけでは無いのでどうしても輸入したい物も無いのだ。
それ故3年くらい前まではそれなりの行き来、具体的には半年に一回位の貿易が行われていた。
しかし3年くらい前からは急に回数が増えたのだ。
去年などは6回の行き来が記録されている。
三回に一回は失敗することを考えれば十回は船を出した計算になる。
これはかなり重要な案件と見て間違い無いだろう。
3年前といえばそこからルナに対する工作も増えた時期だ。
それまではボーランクを送り込んでおきながらそこまで強引な手は使って居なかったのだがその頃から冒険者を使ってダンジョン攻略をする様になった。
ビエラに確認したところ同僚や先輩にその指令が出たのは確かにその時期だと言うことだ。
ここまで来ればそれはトーレス王国の覚醒勇者対策だと言うことが馬鹿でもわかるだろう。
まぁ、それをウチの勇者達に言ったら。
「えーなんでなん?」
とか言ってたのがいたがな。
誰とは言わないけど……。
さて、ここで問題なのは帝国が仕掛けてくるタイミングだ。
取り敢えず俺が仕掛ける側だったらどのタイミングで仕掛けるか考えてみる。
考えられるのは魔人兵が来るタイミングに合わせるのが1番有効だと思われるが……。
流石の帝国でも魔人兵の来るタイミングは読めないだろう。
下手にタイミングがズレると魔人兵対策で出した覚醒勇者がそのまま帝国軍に当たることになる。
流石にそれは避けたいだろう。
と言うことで俺の予想は魔人王が死んで6ヶ月、所謂リミットタイムと言われる凪が終了する丁度が直前あたり、Cランク冒険者に魔人注意の号令が掛かる前あたりでは無いかと踏んでいる。
勿論それ以前であってもおかしく無いので警戒は怠らない。
まだまだ帝国には奥の手があってもおかしく無いのだ。
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