第155話 メモリーグラス
前方からオーク二匹が現れる。
「そちらは任せたわ。」
パールが1匹のオークと対峙する。
俺はもう1匹のオークの剣を受け止める。
「任せろ。」
俺だってFランクだ。
オークぐらい抑えられる。
まぁ俺だと抑えるので精一杯だが。
「アイススピア。」
ミーリスの魔法がオークを貫く。
オークは程なく絶命した。
倒れたオークはアイテムボックスカードに吸収される。
確かに解体も保存も必要無いのは確かに楽だ。
これも報告案件だな。
もう1匹は程なくパールが切り伏せた。
彼女は本当にFランクか?
明らかに強い様な気がする。
ミーリスとクスーラゥもランク以上の実力だ。
万年Fランクの俺なんかが同じパーティで良いのだろうか?
疑問は尽きないが今は置いておこう。
それよりも、これは……
俺はクスーラゥを見る。
俺が受けた指令の重要条項は3つ。
1、ススムリセイの所在。
2、覚醒勇者の所在。
3、クスーラゥ・ルアシーンの所在。
その内一つが目の前に居るんだが。
正直この内一つでも達成できれば任務成功となるはず。
つまり俺は既にミッションをクリアしてるんだ。
しかしどうするか?
重要条項以外にも情報を集める様には言われている。
このまま離脱しても任務は成功となるだろうが、それだけでは片手落ちだろう。
今の所俺の正体に気が付かれた様子はない。
このまま出来る限り情報収集をさせて貰おう。
俺はそう決めたのだった。
「どうだった?」
俺が帰ってきたパール達に尋ねる。
「ダンジョンに入った際にスキルの発動を感知しました。検査機によると記憶を弄るスキルの様です。」
「成程、ほぼ推測通りだな。」
「ステータスやスキルに変化は見られませんでした。だとしたら何故あの様な無能者にこのスキルが使われたのでしょう。」
パールの疑問はもっともだ。
もっと優秀なものにこのスキルを使う方が良い結果を得られるだろう。
「それに関しては二つほど予想出来る。一つは油断を誘うためだ。実際今俺達は彼を泳がせている。有能な者なら即拘束しただろう。二つ目は無能な者にしか使えないスキルの可能性だ。記憶をいじると言った特性上本人の抵抗力が邪魔になる場合がある。ただこれには少し疑問がある。」
俺は少し考えながら話す。
「ボーランクにも同じスキルが使われたと推測されるがボーランクは諸味とか人間性は置いておいて事務的にはかなり優れた人材だ。同ランクの冒険者ならDランクが用意出来るだろう。」
「優秀な人間に掛けられない訳ではないのですか?」
「ただこれに関しては一つ補足がある。ボーランクは施設で教育を受けていたそうだ。スキルを受け入れる様な教育もあったのかもしれない。」
「実際は解らないのですね。」
「今行った中で9割は正解が出てると思うが……彼がもう少ししたら捕捉する。俺がやるからお前たちは普通にパーティとして接してくれ。」
「分かりました。」
ススムは考える。
これからもあの手この手で探りに来るだろう。
出来れば元から断ちたいと思うのであった。
ーーーーーーーー
少しでも面白いと思われましたらモチベーションにもなりますのでブクマ評価をよろしくお願いします。
とにー




