第148話 誘拐の顛末
クースイの街の領主館には50人の衛兵が集まっていた。
これから誘拐犯のアジトを急襲して誘拐犯を皆殺しにするのが目的である。
指揮いるのは衛兵隊の副長だ。
彼はエール商会と繋がっていた。
衛兵隊長は若いが無骨な人間で賄賂などに靡く人物では無かったが、武を極める事と治安維持以外は無頓着だったので彼が実質衛兵隊を仕切っていた。
この50人は彼が個人的に動かせる人数だ。
本来衛兵隊は200人いるのだが隊長は意外と人望はある様で実質仕切っている副長であっても実際に良い目に合わせているこの50人しか集められなかった。
しかし、誘拐犯を殲滅することくらいはこれだけいれば充分である。
誘拐犯のアジトは既に分かっているし見張もつけてある。
奴らの手口も解っているので逃げ出す方法も防いである。
準備は万端だ。
被害者である少女は残念ながら既に処理されている事になっている。
あの少女、セリアスは団長の許嫁だ。
彼は本当は副団長でいること自体不満であるし若い団長の下というのも納得していなかった。
今回の件で団長の資質を問えるしアール商会もダメージを与えられる。
亡命の件があって領主も庇うことは出来ないだろう。
それどころか既に領主である代官はアール商会と距離を置いている。
その分断はさらに深まるであろうしもうひと押しでアール商会を潰すことができるだろう。
そうすればエール商会の版図は広がるし力もます。
彼の懐も潤って団長の目も出てくると言った腹算用だ。
「よし行くぞ!」
私が号令を出すと集まった衛兵達は動き出す。
隊長も動いてはいるが彼は私が出した偽情報で全然違う場所を調べている。
私達はそのまま誘拐犯のアジトがある地域の裏町の建物に向かう。
その建物の付近はあまり人通りがなく人の目を引く様な建物もない。
隠れるには良い場所だが、事を運ぶのにも適した場所だ。
しかし、その建物に近づくと不思議なことが起きた。
霧が出てきたのである。
この時期、確かに霧が出やすい気候ではあるのだが街中にここまで霧が出たことは記憶に無い。
私は部下に命じて霧に紛れて賊を逃すことがない様に言明した。
しかし、後方の兵からは返事が無い。
確かめる様にすぐ隣にいる部下に言うがその部下からも返事は無かった。
慌てて周りを見まわすが悪い視界の中に私以外に立っている者は居なかった。
そして私の視界も真っ赤に染まった。
霧影side
癒着している衛兵を炙り出すのに簡単だからと言うことで今回の策が実行された。
実際この程度の者達を殲滅することなど造作も無い事だ。
そして今回霧を使ったのは一つの実験でもある。
私の霧が結界の様な役目を持つと言う点からススム様から一つの実験を言い渡された。ススム様からダンジョンコアを模したオーブを預かり霧の中で殺した者の魂がそのオーブに集まるか?と言う実験だ。
そしてどうやら実験は成功した様だ。
先ほどからオーブに何か力が集まっている。
そして死体をアイテムボックスカードに回収した私は霧の様に消え去った。
その後正しい情報を聞いた隊長が少女達を救い出す事となった。
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とにー




