第147話 誘拐
「レインさん学校には慣れましたか?」
「セリアスちゃんありがとう。だいぶ慣れたよ。」
他愛も無い会話をしつつ2人の少女が道を歩いている。
当然アール商会の用意した護衛も付いている。
ただ娘の意向もあって少し離れたところから見守るといった形になっていた。
ここは表通りでは無いが裏道でも無い。
普通に人通りはあり、危険な道と言うわけでは無い。
それだけに護衛も油断していた。
この場で気を張っているのはレインと言う少女だけだ。
しかし彼女はプロである。その事を誰にも、おしゃべりしている少女は勿論今から誘拐を企てようとして居る犯人にさえ気が付かせない。
実は気を張っているのは誘拐を防ごうとしているわけでは無い。
誤って警護対象が傷ついてしまったりしない様にと言う事に神経を使っている。
今回クランから指名されたのは誘拐に特化したメンバーだ。
その手際は恐ろしく洗練されている。
2人の少女の前方から商人ぽい格好した男が歩いてくる。
所作に疑わしい様な雰囲気は見られない、自然な歩き方だ。
そしてその男が少女達と擦れちがおうと並びかけた時にそれは起きた。
彼女達の姿が一瞬にして消えたのだ。
そしてその男も姿を消した。
油断していた護衛達は一瞬目を離した瞬間に全てが終わっていたのである。
「何故、2人とも連れてきたんだ?」
誘拐グループのリーダーが実行犯の男に問い詰める。
本来ならターゲットの少女だけ連れてくる予定だったのだ。
「それが、俺が仕掛けようとした瞬間、何故かこの女が対象に抱きついたんですよ。」
「ふむ。」
リーダーは考える。
彼らの誘拐の手口は彼らに開発した魔道具によるものだ。
ファンタズマスクリーンと投網を合成したもので対象に被せると周りの風景を模すため何も無い様に見える。
勿論近くで見れば違いは解るのだが遠目からだと消えた様に感じるのだ。
故に対象が接触していたらそれを引き離す様な事は出来ない。
だからもし気が付かれたのならそんな対応は取らないだろう。
危機感知が優れている?もしくは偶々か?どちらにしても捕まえたのなら問題は無いか。
2人の少女は今アジトの地下にいる。
後の手筈は別のメンバーの仕事だ。
報告が来るのを待って処理すれば良い。
少し面倒ではあるが依頼では証拠を残さない事が求められている。
証拠を残さないのであれば1番楽なのはダンジョンだ。
報告が有り次第ダンジョンまで連れて行きそこで処理するのが予定だった。
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とにー




