第144話 ドーステン皇国
ルアシーンを取り戻し、クスーラゥが女王となって幾らかの時がすぎた。
周囲の街の反響はとても大きく王宮には挨拶の列が途切れないほどであった。
帝国の反応は静かな物で国境に軍は展開しているがちょっかいを出して来ると言うよりは防御を固めていると言った感じだ。
やはり大きいのは俺の存在だ。
四人目のSランク冒険者。
しかも対外を専門とする初めての覚醒勇者だ。
危惧を抱かない訳はない。
Sランク冒険者は制約の効果が無いことは帝国も情報として掴んでいる。
帝国は今まで現れた覚醒勇者も何らかの影響下に有るのだと曲解していた。
都合が良いので否定はしないがな。
ところでミーリスはと言うとクスーラゥの侍女みたいな位置に収まっていた。
挨拶を受けるクスーラゥをそれなりにフォローして気楽に過ごしていた。
「もう疲れたー、謁見場に行きたく無いー。」
クスーラゥがゴネる。
「そんなこと言うとススムさんに笑われるよ。」
「ススムの名前を出せば良いと思ってー、ミーリス変わってよー。」
「ほらほら女王様でしょ?頑張って。」
「うーーー。」
渋々動き出すクスーラゥ。
今日は帝国領から亡命してきた貴族の挨拶だ。
元は他の国の貴族だったものが帝国に併呑された際に降爵されて恭順をさせられていた者だそうだ。
領民の為に仕方なくだったのだが、優秀であったがが為に逆に閑職に追いやられてしまったらしい。
領地を取り上げられて人質を取られて謹慎していたのが今回の件で衛兵が大量に動員されたため協力者と共に亡命できたと言うことだ。
「クスーラゥ様、亡命を受け入れていただきありがとうございます。」
「ブルーノ伯爵も大変でしたね。」
「その名で呼んでいただけるとは……。」
ブルーノは深々と頭を下げて感動している。
彼の元の身分は伯爵だったのだ。
「頭を上げてください。私たちはあなたを歓迎します。」
彼の様に恭順させられた貴族は多い。
帝国の急激な領土拡大の影響だ。
統治できるものの人材教育が間に合わなかったのだ。
まぁこの様な場所にスパイや暗殺者が送られてくる可能性もあるが、そこはススムの手の者がチェックしているので問題ないのだ。
クスーラゥに勧められて頭を上げるブルーノ。
そこである事に気がついた。
ブルーノの視線はミーリスに向けられていた。
そして目と目があった瞬間ミーリスは俯いてその場から退出しようとする。
しかし、クスーラゥが許さない。
「ミーリス、どこに行くの?」
と、その瞬間ブルーノが叫んだ。
「失礼します。ミーリシア様、ミーリシア様では無いですか?」
ミーリスは明らかに顔を顰めて「あちゃぁ。」と呟いたが周りの注目を浴び、観念した様にブルーノに話しかける。
「ブルーノ伯爵、お久しぶりですね。」
「やはり生きていらっしゃったんですね。処刑された名簿には無かったものですから一途の望みを持っておりました。」
感動の涙を流すブルーノにどうしようかと戸惑うミーリス。
そこに後ろから声が掛かる。
「いるじゃ無いか臣下が……折角だからドーステンも取り戻してやろうか?。」
突然のススムの登場だった。
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「こんなこともあろうかと。」
「話は聞かせてもらった。」
みたいな感じで現れました。
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とにー




