第130話 ドラゴンの事情
「俺はススムだ。ここの領主をしている。」
俺はホテルのプライベートルームに女性を招いて自己紹介をする。
特に誤魔化す様なことはしない。
その方がこの場は良いと感じたからだ。
「君がCランク冒険者か、私はシルビア。多分正体も解っているだろうから言うが赤龍のプリンセスだ。
「やはりそうでしたか。それで今回はどんな目的で?。」
「復讐……と言ったら?」
シルビアの気が膨らんで獰猛な笑みを見せる。
「それは困りましたね。」
俺は涼しい顔で返事をする。
「そんなことは露ほども思ってない顔だわね。」
「ぶっちゃけましょう、報復は検討されたのでしょうが改められたと推測します。」
「ふむ、中々利口だね。」
「でも少し疑問があります。」
「何?」
「ドラゴンは執念深い種族だと聞いて居たのですが……。」
「君が富や名誉を求めて我が領土に来て同胞を討ったのなら復讐するだろうね。でも自衛のために倒したことをそこまで責めることはないよ。」
「そこまで解るのですね。それにドラゴンは俺の出世に使わせて貰いましたが。」
「結果論だろう。我々は過程を重要視するのだよ。そう言う意味で言えば卵を盗んだ者に関しては復讐の対象になるな。」
「そういえば卵ですがどうしますか?」
ブランは既にかなり育っているし懐いているので返したくはないのだがな。
「やはり卵も君が持って居たか。」
「実は既に孵っています。丁度俺がドラゴンを倒した時に孵化した様で懐いてしまったので連れて帰りました。」
そこは正直に言う。誤魔化すことは正解ではないと感じているからだ。
「成程、その子に会えるかな?」
「ええ、それでは転移します。」
俺は転移でシルビアとスペーディアを連れてダンジョン最深部に飛ぶ。
色々弄った所為で現在ダンジョン最下層は20階層になっている。
そこには10メートルほどに育ったプラチナドラゴンの子供がいた。
「くっー。」
俺を見つけると駆け寄ってくる。
そろそろ食事の時間だな。俺はいつも通りオンラインショップで買った黒毛和牛を10キロほど用意する。
「それは美味そうだね。」
見て居たシルビアが欲しそうにするので20キロほどお裾分けする。
「それでどうするんですか?」
俺が尋ねるとシルビアは答える。
「どうともしないよ。元気でしたって報告するだけさ。ドラゴンは生まれて仕舞えば個人の問題なのよ。保護を求められれば一族として保護はするけどね。元気で居るのなら問題はないわ。彼女の意思でここに居るのならそれは尊重するわ。それは女王も同じだわ。」
そう言った後ブランを見て尋ねられた。
「それで、名前は何と言うのかしら?」
「ブランシェと名付けました。ブランと呼んでいます。」
「良い名前ね。それじゃぁこの話は終わりね。」
「それじゃぁ呑みにでも行きますか?」
「良いわね。」
「勝ったから俺の奢りです。」
「よーし、飲むわよ。」
三人で繁華街に消えるのだった。
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とにー




