第129話 御無礼
「ロン!メンタンピンイーペーコードラドラ。一万二千。」
綺麗な発声が響く。
「ぐっはー、ラス引いた。」
今度はあんまり綺麗な声じゃないおっさんの声だ。
確かあれはバロックさんと同じパーティの……ジロンだったか。」
かなり打ち塞がれている。
俺はメーバーを呼んでレートを確認する。
点銀の千二千か。
日本円だと1000点千円だな。
まぁまぁの高レートだが、昔のマンション麻雀程ではない。
半荘一回で4、5万が動くと言ったところか。
ジロンがここで抜けたので俺が席に座る。
そして正面にドラゴンであるはずの女性を見る。
こいつはヤバいな。
俺の危機感知にビンビン来る。
俺が倒したあのドラゴンなどとは比べものにならないほどの危険度だ。
さすが人化出来るだけのことはある。
もしここで暴れられたら俺ではどうしようもない。
スペーディアを連れてきて正解だった。
まぁ多分暴れるつもりは無いとは思うが人間では無いのだから何が起こるか分からない。
俺は席に座ると点棒を指で摘みながら一度は言ってみたい台詞を言う。
「レートを上げませんか?」
この台詞は上がった時に言うあの台詞に並んで言ってみたい台詞トップ2なんだよねぇ。
まぁ最初に言う台詞でないことは割愛しておく。
すると正面の女性は
「良いよ。」
と賛成してくれた。
両隣の男も賛同した。
「それでは点金で」
俺の言葉に周りの人たちからおおーっと声が上がる。
日本円にすると千点10万円、箱ると300万円馬も合わせて500万の支払いだ。
これだけの高レートはバブル期でもそうは見られなかった。
「良いよ。」
「良いでしょう。」
「お兄さん若いけど大丈夫かい?」
正面のお姉さんは普通に応じて、右隣の太った男は商人の様だ。余裕が感じられる。
左側は如何にも輩の様な男で俺の心配をして居た。
「問題ないですよ。」
俺は配られた配牌から3筒から切り出した。
俺は麻雀は基本確率のゲームだと思っている。
与えられた情報から確率を計算するのだ。
そして確率の高い方を選択する。
その塩梅が重要だと考えている。
が
それはあくまで長期間を見越した場合だ。
短期決戦の場合やはり運と気迫だろう。
勝負は小さな上がりが繰り返されて余り差が開かない。
輩の男が沈んでいくが残り3人は平たいまま3万点前後でだんご状態だ。
オーラスで俺は三家だがトップとの差は僅か4000、しかしザンクでは届かない。一向聴で断么ドラドラなのでリーチは必要ないが門前が必要だ。
そこで下家からリーチが掛かる。
俺はその牌を鳴いて聴牌を取る。そして見事上がって逆転した。
「良い勝負だったね。」
対面の女性が話しかけてくる。
「ええ、良い勝負でした。運が良かったです。」
「貴方は只者じゃないね?」
「お姉さんこそ。」
笑顔を向け合う2人は何となくシンパシーを感じた。
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とにー




