第105話 ルアシーン攻防戦 帝国兵の独り言
20年前、今の皇帝が誕生してから、帝国軍は幾多の戦争を起こしてきた。
そして勝利してきた。
俺は戦争初期から参加している兵だ。
名をボンプと言う。
戦いの才能は正直無い。
これだけ長い間軍籍にいながら、今だに班長にしかなれていない。
それもほとんど初期からいるからと言うだけの昇進だ。
正直部下からも舐めてみられてはいるが直属の上司が出来る人物なので表立って反抗はされていない。
俺の同期はほとんどが小隊長以上か、もしくは死んでいるかなので、こんな地位で生きているのは俺ぐらいだろう。
まぁ、俺に唯一あるスキルの危機感知のお陰なんだろう。
その所為で昇進チャンスを逃しているのかもしれないが、チャレンジしたら死んで居た可能性が高いだろうな。
戦う才能は全く無いからな。
我が帝国は元々そんなに大きな国では無かった。
しかし、勝利を繰り返し巨大な国となっていった。
最初は隣国であった、ナウル王国だ。
戦いは激戦だった。
しかし皇帝陛下が前線に出ると状況が変わった。
陛下は特殊なスキルを持っていて前線で敵兵を消し始めたのだ。
あのスキルは……正直恐ろしかった。
何か悍ましいものを感じた。
陛下に対して不敬であるからそんな素振りは見せなかったが一緒に見ていた同僚達も多分同じ感想だっただろう。
陛下はそれ以降何度か戦線に参加したが初期の頃だけだ。
だからあの陛下のスキルを知っているのは数少ないだろう。
雑兵で知っているのは多分俺だけじゃ無いかな。
正に自慢には成らないがな。
実は現在トーレス王国との戦争には俺は召集が掛かっていない。
現在ボーヤン帝国には50万の兵が居るのだがトーレス王国に対しては雑兵は不要らしい。
雑兵などいくらいても噂のCランク冒険者に掛かっては紙のよう物なのだ。
精鋭10万が戦闘に参加しているが攻略は遅々として進んで居ない。
トーレス王国恐るべしである。
そんな訳で俺達はここのところ戦争への招集は無い。
とは言え広い帝国だ。
治安維持等の仕事はあるのだがな。
ところが今回久しぶりに軍としての招集が有った。
最初はルナのダンジョンに突入する部隊だ。
ただしルナとは折り合いがついていてダンジョンの中は脅威では無いらしい。
楽な仕事だと言われたが俺は参加を拒んだ。
例の危機感知が働いたのだ。
次はルアシーンを攻略する軍の召集だ。
こちらも嫌な予感はしたが命の危険を知らせるような物では無かったので参加を決めた。
戦争参加はお金がいいのだ。
攻略軍総司令のバルログは軍人学校の同期だ。
随分偉くなってしまったな。
バルログは軍を4つに分けた。
俺は左翼に回された。
おそらく敵が1番来ないところだ。
一度攻めたが失敗に終わり援軍が到着して再度の侵攻となった。
兵の数がさらに多くなり俺の出番も減るだろう。
大軍の後ろでゆっくりしていれば楽に勝てるだろう。
そう思えるほどの大軍で、圧倒的な戦力差だった。
しかし、俺達は敗走している。
一万もいた主力軍は壊滅したらしい。
その理由も全くわからないまま一目散に俺達は逃げ出した。
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