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3-13 相棒の力になりたいんだ。けど、お前はどう思ってる?

 簡単に言えば、そらのもう一つのお願いというのは今日夜寝るまでビデオ通話をつないでいてほしい、ということだった。

 なんだそんなことか、とは思うものの多分そらは俺とほずみとのことを気にしているようだった。

 そこはまぁ、今日のところは用事があると伝えに行くくらいはさせてもらいたい。そらもそれはわかっているのかうなずいてくれた。……ちょっとばかり、行ってほしくなさそうな感じではあったが。

 それに同じ部屋にいるというならいざ知らず、それぞれの部屋から通話をつなぐくらいならほずみも許してくれる――はず。

 案外嫉妬深いことは知っているので、俺がぼこぼこにされる可能性も高いが、相棒の一大事その時は甘んじて受け入れよう。

 と言ってもあくまでそら自身の問題である今回のことで俺ができることはあんまりないように思えた。

 どうにも中学生の頃に何やら失敗というかトラウマがあるみたいで、たまたま聞いてしまった陰口にそれを刺激されてしまった。

 というのが聞く限りの俺の認識だ。

 その後の隠塚に対する突然わいて出た疑心暗鬼な考えも、そらは隠すことなく話してくれた。

 確かにそらの言うことはもっともだ。

 というか、

「俺も同じだよな」

 というのがまず最初の感想。

 改めてでもないのだが、目が覚めたら病院で今までのことは全部夢、ついでにその日特別な力に目覚めて怪物を倒してる。ついでに相棒のおまけ付き。

 出来すぎだろ。

「わたしはおまけなの?」

 そこは言葉の綾ってやつだから流してほしい。

 というか今思えば、あの時そらに会えたのだってベンチに寝そべってた志穂さんに行けと言われて向かったら、というわけだし。

 これって仕組まれてね?

「つかそんなこととっくにわかってたっていうか、気づかないわけがないっていうか」

「なら……ゆうはなんで平気なの?」

 平気……とは違うが強いて言うなら、

「悩んでも仕方がないって開きなおった?」

「……なんで疑問形?」

 と言われても、そうとしか言いようがない。というか聞いても聞いてもはぐらかすばかりで話す気ゼロの母親と志穂さんにあきらめたに近い。

「なんかわからんことにあーだこーだ悩んで疲れるのがアホらしくなったというか、それならわかる時までとりあえず自分のできることやるかーってなった」

 今の俺の正直なところを口にした。

「……ん〜、なんかわかるようなないような」

 そらは俺の言葉に唸っている。さっきまでの塞ぎ込んだ様子はとりあえずなくなったようで一安心だ。

「でも……ゆうはすごいね」

「なにがだよ?」

「わたし、そんな風にふっきったりすぐできない」

「全然んなことないよ。あの母親にはイライラするし、志穂さんにだってなんで言わないんだって腹立ってる。――ていうかだ、仮に隠塚がお前を意図的にこっちに呼び寄せてなんかしようとか考えてたなら、それってつまり俺も含まれてってことになるよな?」

「ん? ん〜? そうなのかな……?」

 あそこまでのことが偶然でなかったのだとしたら、俺とそら、どちらか一方だけがそうではないとは考えにくい。

「……じゃあ、最初っからわたしとゆうはセットだったってこと?」

「わからん。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

 実に無責任極まりない答えだ。

「……なにそれぇ」

 そらも呆れ気味だ。

「まぁ、それくらいに思っとくのがちょうど良い。じゃないとストレスで胃に何個も穴が開きそうになる」

「ゆうの場合だと本当みたいで笑えないよ」

 そう言って、そらは笑う。泣きはらした目は赤かったが、浮かべる表情には暗さは完全ではないがなくなったように思えた。

「……わたしもそう思えるかな?」

「言ったろ。そうなれるまでつきあう」

 うん、とそらはうなずく。

 これも無責任な言葉だとは自覚していた。

 つきあうと口にしつつも四六時中そばにいることはできない。だができる限り、臆病になってしまっている相棒の心を励ましたいという思いも嘘ではなかった。

 ……これって傍目から見たら、やっぱり浮気になるんだろうか。

 俺にそんなつもりはないが、果たしてそらは俺の言葉にどう思っているのか。

 ちょっと……今、『鬼』の姿になるのは怖いとも思ってしまう。

 出会ってそろそろ一月。

 そらの言うヒーローの相棒ってのを続けてきたが、俺達は文字通りの関係でいられるのだろうか?

 だから、逆に俺はあいつと再会できないほうが良かったのかもしれない。

 そんな最低な考えを浮かべる自分を脳内で殴り飛ばし、俺はそらの手を引きながら立ち上がる。

 そらも抵抗はせず、俺の隣に並んでくれた。

 変わらずその手は俺の手をしっかりと握っている。

 それがどうか、純粋にヒーローの相棒としてへの信頼だけであってほしい。

 俺は心のどこかで願っていたのかもしれない。

 向けられる瞳にこもる信頼を俺は裏切りたくない。

 そんな無責任な願いを抱いてしまっていたのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゆうくんにとっては、ほずみさんも、そらちゃんも「大切」な存在なんですね(*'ω'*)
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