3-12 わたし大泣き。けどかなしいだけじゃなくて
それからしばらく、ゆうは泣きじゃくるわたしのそばにずっといてくれた。
なにを聞かれても答えられないわたしの隣にすわって、なにも言わずにいっしょにすわってくれていた。
その間、ずっと手をにぎってくれていて、それがすごく安心できて、わたしは余計に涙がとまらなくなる。
それからしばらくして、ようやく落ちついてきて、
「……ご、ごめん」
鼻声まじりでやっとそれだけ口にすることができた。鼻はぐすぐすで、きっと今のわたし、すごいひどい顔してる。
「なんで謝るよ」
ゆうはなんでもないみたいにこたえてくれる。今までといっしょ。
「……だ、だって、心配かけちゃって……今、授業中なのに……」
「気にすんな。授業は別にばれてないから良いだろ」
そう言って、ゆうは自分の黒くなった腕を見せてくる。
「……ズル休みだ」
「お前もな」
そう言われてわたしはつい笑ってしまう。
「そういえば、そうだった……」
それからまたしばらく無言になる。
「……おきにひどいことしちゃった」
「そうなのか?」
「おき……なにも言ってなかった?」
「俺が聞いたのはお前がいなくなったって事だけだよ。隠塚の奴、あんな焦ってるとこ見たの初めてだったな」
そっか……そうなんだ。
なのに、わたし……。
「……何があったのか知らないけどさ」
また膝の間に顔をうめるわたしにゆうの声が聞こえてくる。
「俺で良いなら話してみろよ。解決できるかはわからないけど、一人で溜め込むより吐き出した方が楽かもよ」
「……言ったらキライになる」
「嫌わねえよ」
「キショいって思う」
「思わねえよ」
「高校生にもなってとか思う」
「……なんかわからんが、ねえって。お前、俺を何だと思ってる。相棒だぞ、相棒」
……相棒。
わたしがはしゃいで口にしたこと。わたしの好きなヒーローの一人みたいで、特撮オタク全開だった時のこと。
いつもは照れて言わないのに、今はちゃんと口にしてくれる。
「それにな、今日まで何回お前と感覚共有してると思ってんだ? あんな経験した相手に今さらそうそうキショいとか引いたりとかできないだろ」
そう言うゆうにちょっと視線をむける。
ちょっと照れくさそうにそっぽをむいていて、でもだからこそ本当にウソのないゆうのいままでとおなじ言葉だってわかったから。
「……ちゃんと、聞いてくれる?」
「当たり前だろ」
返事もいままでと変わらなかった。
それからいままでのことをぽそぽそと話した。
あいかわらず鼻はぐすぐすで、うまく説明もできなかったけど、ゆうはちゃんと最後まで聞いてくれていた。ちゃんと手もはなさずにいてくれた。
「……」
聞き終えて、ゆうはしばらくなにも言わなかった。
やっぱり、変だよね。自分でも思う。
いきなり自分一人で被害妄想が暴走したって言われても仕方ないなって話していて思った。
「お前さ、隠塚のこと嫌いか?」
突然の質問にわたしは首をふる。
嫌いなんて、そんなことあるはずない。
「んじゃ会いに行くか」
ゆうは事もなげに口にする。
「……ダメだよ。あんなことあって……会いづらい」
「なら、ずっとこのままでいるか? どっちにしろ鬼脅が出たら嫌でも顔あわせるんだ。それなら今のうちに会って、謝って、後のことはそれから考えよう」
「……なんかテキトーじゃない」
「あ〜、悪いが俺にはお前の言う不安やらを解決したりはできそうにない。聞く限り、俺が口出せるようなことじゃなさそうだしな」
……わかってはいたけど、その言葉はすこしショックだ。
「だから代わりに解決するまで俺はお前といっしょにいてやるよ。今からも隠塚に会うの一緒に行くし、怖いなら行けるようになるまで待ってる」
「……いつ行けるかわからなくても?」
「なるべくなら早い方が良いけどな……お前が良いっていうまで待つよ」
その言葉はウソじゃない。ゆうはきっとわたしが大丈夫って言うまでいっしょにいてくれる。
「……カノジョさんに会えないかもしれないよ」
「そこは大丈夫なよう頑張ってくれ。まぁ、少しくらいは許してもらうさ」
「……ゆうは浮気するタイプだ」
「失礼な。俺は一度もそんなことしたことない」
「今言ってたのそんな感じっぽかった」
「そういうんじゃないよ」
「わかってる」
わたしはちいさく笑うと、ゆうもいっしょに笑ってくれる。
「でもカノジョさん怒ると思う。わたしだって女の子なんだから」
「あ〜……まぁ、相棒だ……で通じるかな?」
「ん〜、どうかなぁ? その子も特撮好きだと良いなぁ」
どうかなぁ、とゆうはちょっと不安げだ。
そんな様子がおかしくて、また笑ってしまう。
「……わたし、おきに会う。だから、いっしょにいてくれる?」
それからぎゅっとゆうの手をにぎりかえしながら、決めたことを口にする。
不安で不安で仕方がない。
けど、一人じゃなくて、ゆうがいてくれるなら大丈夫って思えた。
「わかった」
ゆうはわかっていた答えを返してくれる。
「それでね……もう一つお願い」
そして、わたしはもう一つのわがままを口にする。
それは本当に勝手なわたしが自分のためにするお願い。
「わかった」
それでもゆうは受けいれて、うなずいてくれる。
ごめんなさい、カノジョさん。
一度だけわたしのわがままにゆうをかしてもらうのを許して。




