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3-6 やっぱ会えてうれしいんだよ

「あは。やっぱりいた」

 昨日と同じ、自販機の近くで待っていたら聞き馴染んだ声が耳に入ってくる。

 そちらに顔を向けると、昨日も目にしたウルフカットの下で嬉しそうな瞳が俺を見ていた。

「どこって待ち合わせもしてなかったのに、やっぱり以心伝心?」

 そう言いながら、すぐに俺の隣にならんでくる。

「飲むか?」

 二人分買っておいた缶コーヒーの一つを差しだす。

「お、気が利くね〜。しかも微糖。わかってるじゃん」

 そりゃあね、と応えながら俺も缶コーヒーの口を開ける。

 二人で缶コーヒーをすする音が響く。

 昨日よりは早いとはいえ、夜も遅い。周りには昨日同様、誰の姿もなかった。

「そういや大丈夫か?」

「なにが?」

「全裸の変態がうろついてるみたいだからさ」

 なにそれヤバ! と言葉のわりにケラケラとほずみは笑っている。

「家の場所同じか?」

「ん〜? ん〜」

 どっちだ今のは。

「それより〜ちょっと散歩しよ」

 そう言いながらほずみが俺の手をとり、引っ張ってくる。

 握った手はやっぱり暖かった。

 散歩といっても近場をブラブラと歩くだけ。目的地もなくただ二人で歩いている。

 けど、それだけで良かった。

 誰もいない夜の道を歩く。夢の中でもよくしていた二人だけの時間。

 街に遊びに行ったりするのも嫌いではないが、ほずみはこんな静かな時間を好んでいた。

 俺もしんと静まりかえった中に俺達の歩く音だけが響くのが、なにか特別なものに思えて好きだった。

「お、見て見て。ちゃんとあるね〜」

 途中ほずみが道の向こうにある建物を指さす。

「あれはあたしのはじめてが奪われたホテルです」

 やめなさい。

「あ〜照れてる〜」

 そりゃ照れるでしょうが。

「これから行っちゃう?」

 首を傾げて聞かれ、俺はなにも言えなかった。

 その顔が面白かったのか、またほずみは楽しそうに笑った。

 笑って、また目を細めながら俺を見る。

「良いんだよ?」

 その声は艶やかな色をしていた。

 ……ヤバい。なにがヤバいっていろいろヤバい。

「……やめとく」

 そして、なんとか耐えた。 

「え〜? 前はあんなガッツガツきたくせに〜」

 人を万年発情期みたいに言うんじゃありません。

「今は……このままで良い」

 自分でもよくわからない照れ臭さにぶっきら棒な口調になってしまう。

 そんな俺にほずみはからかうことはせず、また目を細めて小さな笑みを浮かべている。それはなんだか嬉しそうで。

「じゃあまたね」

 それからさっきの自販機まで戻ってきて、今日はそこまでになった。

 今度は忘れずと連絡先を聞こうとする。

「ごめん。まだ持ってないんだ、スマホ」

 と残念ながら聞けなかった。

「大丈夫。ゆーくんが会いたいって思ってくれてたらまたちゃんと会えるよ」

 そう言って、気づけばまたその姿は夜の中にいなくなっていた。



 それから自宅のマンションへと戻る。

 結局、連絡先は聞けずじまい――あ、学校どことか聞けば良かったな。

 ……そらにまたなんか言われそうだ。

 そして、七○七の部屋の前に行くと志穂さんがいた。

「ゆー、どこ行ってたの?」

 夜型なのか日中よりもはっきりとした声で聞いてくる。

「あ〜、ちょっと散歩というか」

「昨日も行ってた」

 ばれてたのか。

「あんまり遅くにでるのはあぶない」

「大丈夫だよ。今の俺、そう簡単にやられないしさ」

「ゆー」

 珍しく、その声は本当に怒っているとわかる声色だった。

 普段はぼんやりしているのに、ここぞという時ははっきりしてくるのはずるい気もする。

 けど、心配してくれてるのは確かなので、

「ごめん」

 素直に謝る。

「ん」

 すると志穂さんからさっきまでの怒りの圧は感じられなくなる。

 ごめん。

 しばらく言うことは聞けないよ。心の中で謝罪を口にする。

 そんな後ろめたさと、それを上回るまた会えることへの期待が俺の中で混ざり合っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 志穂さんにも心配をかけている……けど、ほずみちゃんの再会から得られる情報があまりに少なすぎた!!(;´・ω・)
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