1-17 おいてくなぁ!
「……誰に似たんだろうな」
こっちの言葉も聞かずにすすんでいくゆうの背を見ながら、悠子さんは悠長につぶやいている。
「そんなこと言ってないでとめてよ!」
「あれは言っても聞かないよ。そういう目をしてた。これでも母親だ、わかるよ」
「なら……どうしたら」
「あいつも言ってたろ。あいつを助けたいと願ってみるんだ。正直なところ、さっきの昔話の一説がどういう意味合いなのか、わたしには想像しかできない。あくまでも私は実際に見ることも聞くことも触れることもできない尋常な人間でしかない」
そう言って悠子さんは笑う。
なぜだか、なんとなくそれは自分を笑っているかのようにも思えた。
「頼むよ。今、息子の力になれるのは君しかいない。人々を助けろなんて、大層なことは言わない。ただ、今はあの無茶で無謀なバカ息子を助けてやってくれないか?」
うっすらと笑いながら、でもまっすぐと悠子さんがわたしを見ていた。
正直、こわい。
いきなり身体をつらぬくような悪寒を感じて、今も身体が震えてたまらない。
目をぎゅっとつぶる。
でも、でも、怖くて怖くてどうしようもないけれど——。
「まかせて!」
目を開けて、ゆうの方へとかけだす。
バカ! バカゆう!
やっぱり危なっかしいのはそっちだ!
今はわたしは、わたし達はヒーローなんだ!
二人でひとつのヒーローなんだ!
なのに、それなのに‼
「相棒をおいてくなぁ!」
あらん限りの声と思いっきりのばした手と、そして、精一杯の願いと思いをぶつけるように。
我ら汝ら鎮める鬼よ。こひ——けがれの一切合切、祓い清めるべし。
また声が聞こえた。




