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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
最終章:終幕の春
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EP94.涼海のクエスト

 バレンタインから二週間が経った。私はあの時想いを剣義君に伝えて、そのまま返事は聞かないでいた。


 だって、これは飽くまで結衣乃と同じステージに立っただけ。そこから先へ進むのは結衣乃が帰って来てからじゃないと、フェアじゃない。


 …まあ、私が怖かったのもあるけど。


 そんな私は現在単独でクエストに向かっていた。一人でクエストに行くなんて、それこそ初めて行ったあのクエストの時以来だ。


 聞く話によると、この世界には今、「死之美しのび」と呼ばれる私達の世界で言うところの忍者に当たる存在を率いて暴れている鬼神王とやらがいるらしい。

 にしても、この世界はやけに日本の京都に似ている。ただ、京都よりもより昔っぽい、本当に江戸時代とかそれくらいを想起させる雰囲気だった。


「死之美達を率いてる鬼神王はこのミヤコトにいるって聞いたけど…一体どこに…」


 何せ死之美達は夜闇に紛れて人々を襲い、魂を奪って集めているのだとか。何でそんな趣味の悪いことをするのかは分からないけど、確かなのはそいつらを倒すべきってこと。


 そんなわけで私も夜の街を歩き回って死之美を探す。つまり、黒き霧の時と同じだ。違うのは、一人でいることだけ。


 …暗い所は苦手だ。…けど、私には剣義君と結衣乃と、皆がいる。離れていても、心はきっと繋がってる。月並な表現かもしれないけど、それでもそう思うだけで私の心には暖かい炎が生まれるんだ。暗闇すらも照らす、明るい炎が。


 暫く見回っていると、突然悲鳴が聞こえる。私は弾かれたように走り出し、声のした方へ急ぐ。


「お前の魂も頂くぞ!」


「だ、誰か…助け──」


「止めなさい」


 黒い瓢箪を倒れ込む女性に向ける忍者っぽい三人組。それを確認すると、私は素早く女性の前に立って瓢箪を粉々に砕く。


「なっ!…貴様…何者だ!」


「よくも我々の瓢箪を…!」


「只者ではなさそうだが…」


 突然現れた私を警戒して距離を取ってくる死之美達。


「あなたに名乗る必要もない」


「図に乗るな!」


「消えろ!」


「…致し方なし」


 私に向かって掛かってくる死之美達を真っ直ぐ見据え、そしてその攻撃が当たる直前に私は無敵の加護を発動する。突き立てられた苦無は砕け、振り下ろされた刀は折れ、投擲された手裏剣も弾かれる。


「なっ!」


「嘘だろ…」


「矢張り只者ではない…!」


「無駄よ。私無敵だから攻撃は効かないの。死にたくなかったら降伏して捕まるのをお勧めするわ」


「何をっ!」


「こいつ!」


「…雷光」


「「あがががが!!!」」


 忠告も聞かずに飛び掛かって来た二人の死之美に私は電撃を浴びせて気絶させる。


「…まだ戦う?」


「…降伏しよう」


 残る一人…恐らく纏っている雰囲気から見ても彼がこの三人のリーダー格だろう。私が問うと、彼は険しい顔で頷く。


 捕虜となった三人を城へと連れて行き、情報を聞き出す。


「さて、あなた達の目的は?」


「…我々の目的は、人々の魂を集め、その力で“器”を起動すること」


「“器”?」


 飛び出て来た情報に、私は続きを言うよう促す。


「我々死之美に伝わる秘宝…それを使えば、生者と死者の空間の狭間を無くすことが出来る」


「…つまり、あの世とこの世が混じり合うってこと?」


「そういうことだ」


 頷くのはリーダー格の死之美、名前はイガノスケと言うらしい。

 イガノスケさんは私の方を見ると、頭を下げてくる。


「…君の実力を見込んで、頼みがある」


「頼み?」


「死之美の計画を止めてくれないか?」


「…どういうこと?」


 仲間であるはずの死之美の計画を失敗させるよう頼んでくるその姿勢に、私は怪訝に尋ねる。


「我々の棟梁…鬼神王を名乗っているコウガマルは私の竹馬の友なのだ…。昔は優しい男だったが、愛する者を失ってから人が変わってしまった。今の奴は修羅の道を進み続けている。実力は確か故に誰も止められなかったが…お主なら」


「…言われなくてもそのつもり。けど、分かった。あなたがそう言うのなら、死なせないで倒す」


 この世界でやるべきことはハッキリした。計画を止めるためにも、約束してしまったからにも、一刻も早く鬼神王…コウガマルを見つけ出さなくては…。

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