EP93.クエスト終幕
一夜が明け、朝一に出発した俺達はお昼頃には王都へとやって来ていた。
「…セルラ、この戦いで決着が着く」
「はい」
「先に礼言っとくぞ。ありがとな」
「いえ。私こそ。…もう一度貴方に逢えて良かったです。……想いも伝えられましたから」
「…さて、そろそろ突入するか」
「行きましょう」
「現し身の鎧…俺に力を貸してくれ」
「!色が変わってますね」
「真に認められた証ってことか」
俺とセルラは占拠されているという王城へとやって来ると、その中へと突入しようとする。
そこで俺が装甲石で現し身の鎧を召喚すると、確かに黒かった部分は銀色へ、紅色のマントは白くなっていた。
「雑魚の相手してる暇はない。氷結魔撃砲」
城内へ入った途端に襲いかかってきたキメラ達を剣義は掌から放った冷気で纏めて凍りつかせ、砕け散らせる。
「侵入者発見」
「排除する」
「今度はハイエンドかよ。剣戟流星群」
襲いかかってきたハイエンドのキメラと、それに統率された合計13体のキメラ達の攻撃に対し、剣義は四本の光剣を自身を囲むように放ち、その場で高速回転させて敵を弾き返す。
「何っ!?」
「馬鹿な…!」
「終わりだ」
「かはっ…」
「ぐふっ…」
攻撃を受け切った後、剣義は更に光剣を9本生成し、キメラ一体一体を刺し貫いて消滅させる。
そんな調子でキメラ達を蹴散らしながら城の内部を進むと、最上階の広間に出て来る。
その部屋の開け放たれた大きな窓の外を見ているのは、異質な雰囲気を纏い、ローブを羽織った怪しい男。そしてその傍にはロープで縛られた王様達が。
「お前が…マドサイエだな」
「如何にも。私こそがマドサイエ」
「なら…ここで倒す!」
「強いと言っても所詮は人間。…捻り潰してやろう」
マドサイエと向き合った俺は聖剣を構える。
「祝福の翼!」
「!何…!?」
「はああああっ!!!」
余裕綽々といった様子のマドサイエに対し、俺は背中から翼を生やし、そのまま突撃して窓から中庭へと飛び降りる。
「鳥の翼…?何だ、お前もキメラか」
「お前等みたいなバケモンと一緒にすんな。…こっちは、世界の命運背負った…“勇者”なんだよ!」
「良いだろう。ならばこちらも全力で…」
そう言ってローブを脱ぎ捨てたマドサイエの姿は、身体にはトカゲのような鱗が生え、薔薇が絡みついている。その手は毛むくじゃらで鋭く長い爪の生えた獣の手。脚は人間の脚をベースに、その足先は手と同じく獣の足となっていた。背中には蜘蛛の八本の脚が蠢き、烏賊の触手が生えている悍ましいものだった。
「…狂気の科学者に相応しい気持ち悪い姿だな」
「なんとでも言え…この究極の力で、貴様を消す…!」
「てかあいつも蛸使ってたけど、流行ってんの?触手」
「使い易いだけだ…ふん!」
剣義が煽りつつ軽口を叩いていると、マドサイエは触手と茨を放つ。
「…業火炎聖斬!」
「む…!」
「まあ良い。…ここで潰す」
剣義は爆炎を纏った聖剣で一度薙ぐことで焼き払い、触手と茨を消し炭へと変える。
「だあっ!!」
「くっ!…何故だ…何故能力が通用しない…!」
「俺のが遥かに強いからに決まってんだろうが」
「馬鹿な…認めん…!」
マドサイエは触手、茨、爪、蜘蛛の脚を駆使して連撃を仕掛けて来るが、剣義が片っ端から障壁、爆炎魔撃砲、聖天銀河斬、念力で対応したため、能力を通用させることも出来ずに一方的に叩きのめされる。
「…知るかよ。トドメだ…!祝福の翼」
「くっ…!」
「失せろ!ハイスカイ・グランドエンド!」
剣義は背中には祝福の翼を展開した状態で飛び上がり、そのまま両脚で氷炎魔撃を発動させると、太陽を背に、マドサイエ目掛けて錐揉みしながら急降下する。
「ぬうあああああっ!!!!」
剣義の一撃を受けて中庭にはクレーターが生じ、その中心にいたマドサイエは跡形も無く消滅する。
そして、それと同時に剣義の足元には帰還用魔法陣が展開する。
「長かったな…一人クエスト」
「勇者様!」
「ここまで本当にありがとな。多分また会うことは無いと思うけど…互いに頑張ろうぜ」
「はい!…勇者様も、頑張ってくださいねっ」
「…言われちゃったら、頑張んないわけにはいかねえなぁ。…じゃあな」
「はい!…本当に、ありがとうございました!」
セルラから掛けられた言葉の意味を理解した俺は苦笑いすると、深々と頭を下げるセルラの姿を見た後、元の世界へと帰る。
剣義が消えた後、セルラは地面に座り込み、涙を流す。
「…さようなら…私の…初恋…ッ…」
そして暫く泣いた後、セルラは立ち上がる。晴々とした顔で。
「…応援してますからね。勇者様」




