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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
最終章:終幕の春
85/111

EP85.襲撃


 俺とセルラが宿に到着し、それぞれの部屋で暫し休んだ後、共に夕食にする。


「おっ、これって…」


 目の前にあるのは以前この世界に来た時に食べた唐揚げのような料理。


「ご存知なんですか?」


「ああ、前に来た時に食べたんだよ、あの定食屋で」


「そうだったのですね!これはラカーゲと言う鳥の肉を使った料理です」


「へえ、やっぱり俺の世界の唐揚げって料理に似てんだな」


「そんな料理があるのですね!」


 思ったよりも唐揚げだった。しかし何によりも興味を誘われるのは目の前にあるビーフシチューのような料理だ。黒き霧が狙った人が共通して口にしていたものであり、俺もあの時食べたいと思っていたものだ。


「それに、これって…」


「これはシュービチフーと言う料理で、私も大好物なんです」


「やっぱ好きなんだ。黒き霧に襲われた時も食ってたもんな」


「な!な、何故それをご存知なんですか!?」


 何気なく言うと、セルラは驚いた様子で慌てふためく。その様子に、俺もあの時のことを言うべきか僅かに思案し、伝えることに決める。


「え!?あー…引かないで聞いてくれよ?あの時、君に抱き付かれた時にスパイスの匂いがしたから…」


「そう言うことでしたか。…あの時は本当にありがとうございました。お陰で今日も生きてます」


「…ま、倒したのは涼海と結衣乃だしな。俺に礼言ってもなぁ」


「そんなことは…」


「いやいや、本当に何もやってねえんだよ、俺」


 別に俺あの時何もしてないしな。寧ろ禁断の果実食ってぶっ倒れていた分迷惑掛けてるし。

 何も出来なかった頃のことを懐かしく思い出しながらシュービチフーを口に運ぶと、濃厚な旨味とコク、そして程よい甘味とほんの少しの辛味が爽やかに舌先を駆け抜ける。


「うおっ!めっちゃ美味え!」


「お口にあったなら何よりです」


 俺がパクパクとシュービチフーを口に運ぶのをニコニコと笑いながらセルラは見守っていたのだった。


 やがて夕食を食べ終えたタイミングで、セルラは話を切り出す。


「あの、さっきの何もしてないって話ですけど…」


「ああ、それがどうしたの?」


「私は、勇者様に本当に感謝してるんです。あの時、駆け付けてくれて、助け起こしてくれた。それだけで、本当に心が救われたんです」


「そう言ってくれると…嬉しいけどさ。ありがとう」


「お礼を言いたいのはこっちです!…あの時から、ずっと、私は貴方様が──」


「大変です!」


 セルラが何かを言い掛けたところで、従者の一人が飛び込んで来る。


「な、何事ですか?」


「キメラの襲撃です!しかも、今回はハイエンドもいます!」


「!統率型と言うわけね。…勇者様!」


「分かってる。行こう!」


 従者からの報せを聞いた俺達は慌てて外へと駆け付ける。


「あれか…黒き霧と同型、犬三匹のキメラってわけだ」


「ご武運を」


「ああ。セルラは他の客や従業員と一緒に建物の中へ」


「はい」


 セルラは俺の指示を聞いて宿へと戻り、俺は聖剣を取り出しつつ、群れを睨む。


「さて…先手必勝!数には数だ!…剣戟流星群!!」


 俺が聖剣を振るうと、虚空から数十本もの光剣が生み出され、キメラ達を切り裂いていく。


「!…お出ましか、ハイエンドモデル!」


 背後から攻撃を仕掛けられたので、障壁を展開して攻撃を防ぐ。そして振り向くと、そこには狼男のようなキメラが。一目見て確信する。こいつこそがハイエンドモデルであると。


────


 剣義がハイエンドモデルのキメラと対峙していた頃、宿にいたセルラの元にも刺客が現れていた。


「!ハイエンドモデル…!一体どこから!?」


「おやおや、随分と可愛らしいお嬢さん。私は正面から入って来ましたよ?ただ…透明でしたがね!」


 セルラの元にはカメレオン、タコ、バラが人間の形に纏められたかのような醜悪な見た目のキメラが出現していた。


「殺す気でしたが…こんなに可愛い子を殺すのは勿体ない。…そうだ、良いことを考えつきました」

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