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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第四章:決意の冬
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EP76.幻霊剣


「いざ、尋常に!」


 レーケンさんはそう言って幻霊剣を振るう。それに合わせて召喚された剣は高速で宙を滑り、ネズミ達を斬っていく。


「あれが幻霊剣の力ってわけか。…よし、吹雪氷聖斬!」


 俺は足元に聖剣を突き立て、周囲のネズミを凍らせる。


「終わらせるわ。戦姫の(スラッシュド)一太刀(バルキリー)!」


「吹っ飛べ!シューティング・キャノン!」


 俺が凍らせたことで身動きを取れなくなった巨大ネズミ目掛けて涼海の黄金の斬撃と流の放ったエネルギー砲が襲い掛かり、跡形も無く消し飛ばす。


 他のネズミも駆除し終わったことを確認し、負傷した兵士達を助け起こす。


「…数人咬まれた様だな。症状が出ておる」


「そんなに早くに出るものなんですか?」


 涼海の質問に、レーケンさんは渋い顔で頷く。


「ああ。咬まれた箇所を中心として黒い斑点が出ているだろう。これが感染した証拠だ。咬まれて10分もすれば発症する」


「成る程ね。…そうだ、もしかしたら治せるかも知れないので、試してみても良いですか?」


 俺はあることを思い付き、レーケンさんに提案する。


「あ、ああ。しかし、我々の医療で全力を尽くしても…」


「物は試しです。聖なる癒光(ホーリー・ヒール)


 発症した兵士に向けて手を翳し、治癒効果のある光を放つと、黒い斑点が薄れ、消えていく。


「治った…のか?経過観察は必要だが、これは…!」


 彼等にとっては想定外の出来事だったのだろう。どよめきが広がる。しかし、俺はそのどよめきの中、死神病の正体に行き当たる。


「…これではっきりしました。この死神病の正体は

──呪いの類です」


「呪い?」


「どゆこと?」


 俺の言葉に涼海とリンが聞き返して来る。


聖なる癒光(ホーリー・ヒール)そのものにウイルスを殺す力なんてない。飽くまで負傷した肉体の再生、体力回復…そして、相手から与えられたデバフの解除だ」


「デバフ…って何?」


「まずバフってのが攻撃力の上昇だとか、そういう良い効果を及ぼすもの。デバフはその逆で、攻撃力の低下とか、それこそ呪いみたいな悪い効果を及ぼすものだ」


 ゲーム用語に明るくない涼海は首を傾げていたが、流の説明で納得する。


「ま、つまるところは死神ってヤローを見付け出してぶっ潰せば解決する。そういうことだな?」


「ああ。呪いの類…特にこういうタイプは術者がやられたら解除されるのがセオリーだからな」


「何にせよ倒さなきゃいけない相手だし、賛成!」


「流石に感染者全員に聖なる癒光(ホーリー・ヒール)を掛けて回るわけにもいかないからな」


 俺達はそんな会話をしながら宿へと戻る。


──深夜


 俺は昼間いっぱいは症状の進んでいる人を回復して回り、少し休んだ後、訓練場へとやって来て特訓をしていた。


「はあっ!…よし、今のは少し上手くいったな」


「おお!確かに今までで一番良かったよ!」


「後はもっと技の練度を上げていきたいな。…こんな時間までありがとな。リン」


「いーのいーの」


 俺の特訓に付き合ってくれていたのはリン。少し眠そうに目を擦りながら、明るく笑う。


「でもやっぱりツルは聖剣との相性が良いのかな?」


「そうなのか?」


「うん。だって、私の知ってる歴代の所有者達はそれぞれ一生の間で一つしか能力を発現出来ていなかったのに、ツルはこの短期間で三つも発現させてるから」


「まあ、だとしたら好都合だよ。聖剣の力はこれからの俺にとって必要だから」


 聖剣の柄を強く握り締めると、宿舎の方へ向かって歩き出す。


「さーて、今日はもう寝ようぜ」


「だね」


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