EP75.死神の病
一月も終わりが近づいた頃、俺達はとある異世界へとクエストでやって来ていた。
冬休みが終わったあたりから明らかに以前より早いペースでクエストが入るようになっていた。
それに対して俺達はメテスがあちこちで世界を滅ぼして回り、それによって俺達と同じように鍵を持つ存在が倒され、結果としてクエストを受け持つ人が居なくなって俺達の元に割り当てられるクエストが増したのではないかというのが俺達の見解だ。
仮にその見解が当たっていたとしたら、メテスの奴は鍵を持つ者が居る世界を見分けられる可能性もあるため、案外決戦の時は近いのかも知れない。
さて、そんな中でやって来た今回のクエストは、いつものとは毛色が違っていた。
というのも、今回の世界を追い詰めているのは「病」なのだ。
勿論、俺達に病を物理で倒す方法はない。…では、一体どうして俺達が呼ばれたのか。
実はこの世界では「死神病」という病が流行っている。その物騒な名の通り、致死率100%のとんでもない病である。
この病は感染法が特殊であり、それこそが今回俺達が呼ばれた理由。
それは…死神病は噛まれることで感染するのだ。ゾンビよろしく死体が動いて襲い掛かる…のではなく、噛んでくるのはネズミだ。黒い毛に、大きめの体を持つネズミ。これに噛まれた者が発症しているという。
そして、このネズミ達は自然発生ではなく、ネズミを生み出して使役している人物、即ち黒幕がいる。
それこそが「死神」と名乗る謎の人物だそうだ。
死神は己の能力でネズミを生み、更にはそのネズミ同士が繁殖するという厄介さ。
そしてその説明を受けて、俺達は頭を悩ませていた。何せその死神とやらは姿を眩ますのが得意なようだった。政府側が死神の存在を知り得たのも、本人が政府に対して挑発的な文章を送りつけたからであり、その後当局が全力を挙げて手掛かりを追っているが、結局今までも断片的な手掛かりしか見つかってない。
しかもその手掛かりですら、敵が敢えて残した挑発のためのものではないかとすら言われている。そんな相手をどう倒せば良いのやら。
「…という訳なのだが、協力しては貰えないだろうか」
「分かりました。…ただ、相手が見つからないというのは厄介ですね」
「ああ…」
俺達に頭を下げていたのはこの国の兵団の団長…レーケンさんだ。幻霊剣という不可思議な剣を持っているらしい。
レーケンさんと共に暫くの間話し合っていると、突然建物内が騒がしくなる。
「団長!大変です!」
「どうした」
「巨大ネズミが出現し、街で被害を拡大しています!」
「…うむ、分かった」
そう言ってレーケンさんは頷くと、俺達に向き直り説明を始める。
「実は、人と同程度の大きさを持つ巨大ネズミも時折襲撃を仕掛けているんだ。今回はどうやら規模が大きいらしくてな。手を貸してくれないか?」
「分かりました」
「了解!」
俺とリンは返事を返し、涼海と流は頷く。
「…荒れ果ててるな」
「まあな。酷いもんだ」
俺達は準備を整え、街へと出撃していた。街はあちこちボロボロでゴミが散らかった、さながらゴーストタウンのような惨状だった。
現場へ赴くと、そこには沢山の兵士が倒れ、そしてレーケンさんの言う通り、デカいネズミが大暴れしていた。
「やってやらあ、行くぞ!」
俺は聖剣を構え、他の皆も戦闘体制に入る。
「あれ?ツルの聖剣、なんか燃えてない?」
「…ああ、実は出力を弱めることで常時業火炎聖斬か吹雪氷聖斬のどっちかを発動出来るようになったんだよ、は!」
「成る程!」
「お喋りしてる場合かよ。おらっ!」
「数、多いわね…」
俺は炎を纏わせた聖剣で、リンは黒刀で、流は右手の変化したマシンガンで、涼海は無敵の加護を発動させた拳で群がるネズミを倒しながら言葉を交わす。
「凄まじい強さ…私も負けておれんな」
レーケンさんはそう言って剣を構える。
「幻剣召喚」
レーケンさんがそう言うと、剣を構え、そして空間が歪み、まるで幻のように突然剣が出現する。
「これぞ幻霊剣の力!いざ、尋常に!」




