EP74.迷い
メテスの元いた世界から戻って来た後、群星達は思い思いに冬休みを過ごしていた。
そして冬休みも残すところ2日となったある日のこと、俺──流シュウトは大和さんから休みを貰い、群星の家を訪れていた。
インターホンを押し、群星が出て来るのを待つ。
「よお。どうした、流」
「悪いな。今日は暇か?」
「?まぁ、暇だけど」
「なら…俺と戦ってくれ」
「ああ、そういう…って、え!?」
俺が至って真剣にそう告げると、群星は驚いたように目を丸くする。
────
「戦いって…ゲームのことかよ」
「?そうだが」
「ったく、紛らわしいこと言いやがって…」
何故かゴニョゴニョと文句を言っている群星に内心首を傾げつつ、画面に向き直る。
今やっているのは車に乗ってアイテムを取って活用しつつ、レースで一番を目指すゲームだ。
俺はこの世界に来てハマったものがある。それがゲームだ。言葉として言い表せないほどの魅力が、ゲームにはある。
群星の操作するキャラや、CPと入り混じってのレースを続ける。
第三レーン、他のCP達は軒並み置き去りにし、俺と群星だけがトップ争いをしていた。
互いに一位を取ったり取られたりしつつゴールへと近付いて行く。最終的には俺が競り勝った。
「あー!負けちまった!」
「俺の勝ちだな」
その後も勝ったり負けたりを繰り返し、最後はギリギリ俺の方がポイントが高く、俺が勝利したのだった。
「…群星」
「なんだ?」
「俺は今、迷っている」
「迷う?」
「…メテスのことだ」
「!…そうか」
「今までは、あいつはただ敵だと、復讐すべき相手だとしか思っていなかった。だが…」
「本当にただの『悪』なのか分からなくなったのか?」
「…ああ」
俺の言葉を聞いた群星は少し考え、笑顔で答える。
「まあ、無理もないよな。あいつの両親にまで会って、その過去を聞いちまったら」
「……」
「だから迷うのは良いんじゃないかと思う。…けど、何が『悪』か『善』かなんて考えなくて良いんじゃないか?」
「え?」
思いも寄らない群星の発言に、俺は思わず聞き返してしまう。
「だってさ、俺達が戦う理由はそんな所には無いだろ。俺達が戦うのは、守りたいものと果たしたい目的があるからだ」
「!」
「お前の復讐って目的は揺らいでるのかもしれないけど、それでも守りたいもの、出来たんじゃないのか?」
群星の言葉は、不思議と心の中にストンと収まって、それと同時に心のどこかで納得する。
「守りたい…もの……」
「ああ」
「…そうか。そうかもしれないな」
群星達と共闘するようになってまだ少しだが、この世界に来て、彼等と共に過ごしていく内に見つけていたんだ。復讐以上の、戦う理由を。
復讐よりも、彼等の幸せを、今の幸せを守りたいと言う理由が。
俺に手を差し伸べてくれて、居場所をくれた彼等に。
だから俺も、彼等の目的に手を貸したいと思っていた。
群星や、月見や、リンが、俺にそうしてくれたように。
そして、この間メテスの両親に会って、その過去を聞いて俺は復讐という道が本当に正しいのか、自信を持てなくなってしまった。
勿論、奴のやったことは許すつもりもないし、奴への怒りが消えたわけでも無い。それでも。…そう、それでも理解出来てしまったのだ、メテスの気持ちを。
「ま、そうだな…流!今日は一日掛けて勝負と行こうぜ!」
「え?」
「細かいことは一旦置いとけ。考え込んで分かる問題でも無いしな。答えなんてふとした時に分かるもんだ」
「…良いぜ、乗った」
挑発的にニヤリと笑いながらコントローラーを見せて来る群星に、俺も笑って頷く。
その日は一日中様々なゲームをして過ごしたのだった…。
「…ありがとな」
「気にすんな」
「俺の心は決まった。この生活を守る為にも、お前等に恩を返す為にも、メテスと戦う!迷いはもう無い!」
「そうか。…ま、俺達は別に恩だなんて思ってないが」
「それは俺がそう思ってるだけだ。気にすんな」
そう言って、俺は右の拳を突き出してみせる。
「これからも宜しくな」
「…ああ!」
俺の意図に気付いた群星は同じように右拳を突き出し、俺の拳にぶつける。
この頼もしい仲間達とならきっと──きっと、大丈夫だろう。




