EP70.変換の指輪
「変換の指輪…それで一体どうするんだ?」
三人に変換の指輪を見せた俺に、流は疑問をぶつける。
「アイツは身体が気体で出来てる。その場合、考えられるパターンは二つだ。どこかに核があって、そこ以外が気体で出来てるパターンと、本体という概念が無く、少しでも気体が残ってればそこから復活出来るパターンだ。面倒なのは後者のパターンだな」
「確かに。そんな厄介な能力だったら、分体を隠されたら倒すのが凄く大変になっちゃう」
俺の言葉に、顔を顰めてリンが頷く。
「…まぁ、そのパターンは正直ないだろうな。そこまでほぼ不死身の能力なら太陽が昇っただけで逃げる必要はない。…あいつは恐らく太陽が弱点だろうが、本体という概念が無いなら日陰に一部を配置しておけば良い。でも丸っと全部撤退したってことは、奴はどこかに核があるってことなんだろうな」
「そうなる…かな?」
剣義の説明に、まだ半信半疑と言った様子の涼海に、剣義は告げる。
「それに、アイツは三世を名乗ったってことは父や祖父にあたる存在がいるはずだ。核が無い不死身なら、そもそも代替わりしたり、子孫を残す必要はない」
「…確かに、そうだな」
「ああ。で、前者の前提で考えると、奴の本体は恐らく、あの人型の中にあるはずだ。しかし、闇雲に攻撃しても倒せやしない。そこで、コイツの出番ってわけだ」
「変換の指輪…まさか!」
「そう、そのまさかだ。霧が邪魔なら、吹き飛ばせば良い。俺の魔力を変換の指輪で風に換える。
そうすれば、奴に対する有効打になるはずだ」
「成る程。風で霧を消して、剥き出しになった核を破壊…そういうことだな!」
「ああ!これならいける…はずだ」
──夜
剣義達は昨日と同じ墓地の入り口にて、ネロマを待ち構えていた。
「…今夜もここに来るかな」
「こんな堂々と待ってて大丈夫なのか?」
リンとシュウトの疑問に、剣義は真剣な表情で頷く。
「恐らく間違いない。奴はこちらを完全に見下している。自分はやられないとタカを括っているだろうからな」
「…寧ろ、挑発の意も込めてこっちに来るってことか」
「そういうことだ」
そんな会話をしていると、不意に墓地の入り口の目の前に幾人もの人影が現れる。
「来たな」
「みたいだな」
剣義達が警戒を強めると、夜闇の中に声が響き渡る。
「ハッハッハッ!今日も来たのか!!それで良い!今日は、私が君達を操り人形にしてあげよう」
「お断りだ」
「右に同じね」
ネロマの言葉を、剣義が跳ね除け、涼海が同調する。
そして、それと同時に戦いが幕を開ける。
「…とっとと帰るためにも、速攻だ!!」
「!?いつの間に!」
剣義は瞬間移動でネロマの後ろに出現すると、変換の指輪に意識を寄せる。
「吹っ飛べ!!」
剣義が手を翳して叫ぶと、剣義の中の魔力を風へと変換していき、その右掌に風を集める。
そして、次の瞬間には荒れ狂う竜の如き竜巻となってネロマに襲い掛かる。
あまりの反動に、剣義が大きな後退する。
「なっ!!マズい…!」
ネロマは逃げようとするが間に合わず、その竜巻に飲まれ、竜巻は霧を吸って紫に変色すると、そのまま空の彼方へと飛んで行く。
「あれか…!」
「スズ!お願い!」
「任せて!」
ネロマのいた場所にはサッカーボール程の大きさの藤色の球体が現れ、それこそネロマの核であると確信し、涼海は跳躍する。
「ヒッ!逃げ…」
「逃がさない!閃光の一撃!!」
「うあ…っ!わぁぁぁ!?!?」
逃げようとするネロマに一瞬で追い付くと、右足に金色の光を纏わせてオーバーヘッドキックを叩き込む。その一撃はサッカーボールよろしくネロマの体を一直線に飛ばして地面に叩き付ける。地面に直径5メートル程のクレーターを作り、土煙が無くなる頃には、ネロマは完全に消滅していた。
「…つっよ…」
「サイズ的にはそんなもんでしょ」
「…まあ、確かにそうか?」
涼海のあまりに理不尽な高火力に、三人とも絶句しつつも、集合する。
そして少し経つと光に包まれ、この世界へと帰還を果たす。
「…ったく、思ったより長く掛っちまったな」




