EP67.クリスマスパーティー
流もやって来て、リンと共に定食屋に引っ越したその数日後、世間的には“クリスマス”とされる12月25日がやって来た。
前日には終業式もあり、俺達は今まさに、クリスマスパーティーの準備をしていた。
陰キャな俺や大人しい涼海があまりしなさそうなこの行事だが、俺達は毎年いつもの三人+姉貴の四人でやっていた。…まあ、お察しの通りイベント事大好き朝日姉妹の主催だが。
しかし今年は、結衣乃が居なくなってしまったこともあり、姉貴もやるかどうか迷っていた。
そこで俺と涼海は敢えてやろうと決めたのだ。
少しでも賑やかになるよう、リンや速野、流も誘っていた。
その結果、どうやらリンが「クリスマスパーティーをやって、その様子を遠くにいる友達にいつか見せたい」「だから休んでも良いですか?」そんな風に大和さんに相談をしたらしく、事情を聞いた大和さんは「ウチはそもそも定食屋だし、クリスマス限定メニューを出してるわけでもないから大して混まないし、夕方以降なら店を休むどころかウチを使っても良いぜ」と言ってくれたらしく、今年はやまと屋でクリスマスパーティーをすることになった。
何故俺達がクリスマスパーティーをやると決めたかと言うと、さっきのリンの言葉にもチラッと出たが、いつか結衣乃が戻って来た時に、こんなクリスマスパーティーをやったのだと、楽しい思い出として伝えるためにやろうと決めたのだ。
言い出しっぺの俺は、リンや流と共に夕方のやまと屋にて準備を始める。
「クリスマスかー…どんなイベントなの?」
「ああ、二人は知らないか。クリスマスってのは、昔の凄い人の誕生日をお祝いするって言う海外の宗教のイベントだな。
…今となっちゃあ子供はプレゼントを貰ったり、大人も好きに酒飲んだりデートしたり割りかし自由だけど、一般的にはケーキとかチキン…アメリカじゃ七面鳥か?まあ、そんなもんを食ったりするイベントになってるけどな」
「…そんな行事があるんだな」
俺の説明を聞いて興味深そうにしている二人に、俺はちょっとした興味本位で尋ねてみる。
「そういや二人の元いた世界にそう言うイベント無かったのか?」
「うーん、あ!あったかも!魔王祭ってやつ!」
「「魔王祭?」」
真っ先に答えたのはリンだった。しかし、そのクリスマスとはかけ離れたイベント名に、俺と流の怪訝そうな声が重なる。
「そう!アタシの部下が、アタシを讃えて開いてたお祭り!」
「…そ、そうか。まさかの祀られる側かよ」
「そう言えばリンは魔王だったそうだな」
「そーそー」
予測の斜め上の答えの内容に、俺達は困惑する。
「流のとこは?」
「そうだな。セントナイトという、似たようなイベントがあった。子供にプレゼントをあげ、大人は魚の丸焼きや卵菓子…この世界で言うプリンの大きい版のような物を食べ、花火を大量に打ち上げると言うイベントだった」
「成る程な」
「俺も…家族や友人と過ごしたものだ……」
流の言葉に、彼が故郷も家族も友人も全て失ってここにいることを思い出し、俺は慌てて謝る。
「…なんか、ごめん」
「いや、気にしなくて良い。寧ろ久しぶりに思い出せて良かった」
「なら、良いけど」
「所変われば文化も変わる…けど、何処にも似たようなイベントはあるんだねー」
そんな会話をしながら、準備がひと段落する頃に涼海、姉貴に速野が続けてやって来る。
時刻は18時半。全員が揃ったことを確認し、俺はパーティーの始まりを告げる。
「全員揃ったことだし、パーティーを始めよう!」
「おー!」
「待ってました!」
姉貴と速野が次々と賑やかし、そしてパーティーは始まりを告げる。
「普段あんまり作らねえ料理もあるが、味には自信あるぜ」
そう言って得意げに鼻の下を擦りながら大和さんが作った料理を机に並べる。
ローストチキンにピザと言った普段のやまと屋のメニューには存在しないものから、豚カツやカレーなど店の看板メニューまで、様々な料理が所狭しと並んでいた。
「凄い…美味しそう!」
「どれから食べて良いか迷っちまうな」
「貴斗君!唐揚げもあるよ!」
「ですね、先輩。あ、卵焼きもある」
「全種類制覇だ…!」
一面に並んだ豪華料理に、涼海は目を輝かせ、流は悩み、姉貴は露骨にテンションを上げ、速野はそんな姉貴と楽しそうに会話し、リンは全種類食べようと息巻く。俺はそんな皆の様子をスマホのカメラで撮影しておく。
これも俺のアイディアで、写真や動画という形で残しておくことで、結衣乃に伝えやすくするための方法である。
パーティーが始まり、和やかな談笑と共に、それぞれが思い思いの料理を口にする。そして出て来る笑顔を、俺は写真として切り取っていく。
因みに写真部コンビにもカメラマンを依頼しているので、撮影に夢中になって自分の写真を忘れていたという事態は防いでいる。
そして二時間程が経ち、全体的に料理が無くなったものの、皆まだまだ余裕そうだった。それも当然。品種こそ多いものの、六人で食べてもある程度余裕が残るように全体的な量を意図的にセーブしているからだ。
そう、全ては流が冷蔵庫から取り出して来た、巨大なホールケーキを食べる為である。
「凄い!大っきいホールケーキ!」
「これも叔父さんが?」
出て来た巨大ホールケーキに、速野が大和に質問する。
「いや?俺はこういう菓子系は食わねーからな。自分でも作ったことねえし。作ったのはシュウトだ」
「ふーん…って、ええ!?」
「こ、これ、流君が作ったの?」
「凄すぎる…」
大和さんの一言で涼海、速野、姉貴の視線が一斉に流に向かう。そしてその横で何故かリンが胸を張る。
「ふふん。凄いでしょ。シュウトはこれ、パパパって作ったんだよ」
「何でオメーが自慢げなんだよ。…別に、大したことねえ」
「…いや、十分大したことあるだろ。俺も初めて見た時ビビったし」
パシャリ、とケーキや皆のリアクションを写真に収めつつ、俺が流にそう言うと、流は無言で頬を掻く。
その後、ケーキは食べない大和を除いた六人分にするべく、ショートケーキを六等分し、全員に配る。
「美味しい…!」
「見た目も凄かったけど、味も完璧!」
「最高!」
「………」
「…群星ってケーキ好きだったんだな」
速野はケーキを食べて盛り上がっている女子三人の写真を撮り、横を見ると俺が無言でケーキを食べている姿を写真に収め、苦笑する。
…いや、マジでこのケーキ美味いんだって。
そして、クリスマスパーティーは盛り上がっていくのだった…。




