EP64.加入と課題
だいぶ見慣れてきた光が消えると、俺達は出発する前の場所、即ち涼海の部屋に到着する。
「あ、戻って…!誰、その人!?」
「ああ、こいつは行ってきた世界で出会った新しい仲間だ」
「な、仲間ぁ!?」
「まあ、そりゃそういう反応になるよねー」
涼海からすればほんの数秒前には存在していなかった人物が増えてて、突然「仲間です」なんて説明されても困惑するに決まっている。
「俺は流シュウト。メテス=クロノオに因縁があってな。追いかけている。群星とリンから君の話も聞いていた。宜しく」
「メテス…!成る程、そういうことね。私は月見涼海。宜しく」
メテスの名を聞いた途端、涼海は少し険しい表情になり、そして納得したように頷くと、シュウトと握手を交わす。
「…ま、何とか仲良くやっていけそうで良かった。ってか涼海、病人なんだから寝てろ」
「いきなり群星君達が驚かすからでしょ…もう」
「悪かったって」
軽く文句を言いつつも再度ベッドで横になった涼海は、ふと気付いたように声を上げる。
「そうだ、仲間って言ってもどこに住んでもらうの?
そんな簡単に受け入れられないでしょ」
「ま、お前の指摘はごもっともだ。が、抜かりは無い。一応策はあるんだ」
「「「策?」」」
俺の発言に、三人の声がハモる。
そんな三人の反応を見つつ、俺はある人物に電話を掛ける。…まぁ、こんな時に頼れる奴などそう居ない。ある人物とは、皆さんお馴染み速野貴斗である。
『おう、どうした?親友』
「お前の親友になった記憶は無い。…こないだの件、今どうなってる?」
『こないだ?…ああ、あれね。勿論バッチリよ』
「それってさ、追加出来るか?一人くらい」
『…まあ、いけないこともないだろうが、どういうことだよ?』
「あー、実はかくしかってことがあってさ」
『なーる。それで仲間が増えたと。おっけー、おっけー、向こうには俺から伝えとく。…ま、あっちも人手を欲しがってたし、喜ぶだろうよ』
「そうか、ありがとよ」
『良いってことよ。んじゃ、また詳しーく話聞かせてくれよな』
速野がそう言って通話を切る。
「よし、流、そしてリン」
「何だ」
「アタシも?」
「来週からこの街にある定食屋に泊まり込みで暮らしてもらう」
「泊まり込み?」
「来週から…?」
「「ええええ!?」」
「ちょ、群星君、どういうこと!?」
俺の発言に三人は驚きを隠せない様子を見せる。
「いや、リン。お前が最初に相談してきたんだろ。いつまでも俺ん家に居座るのは申し訳ないって」
「あ!そっか、その件の話、纏まったんだ!」
「纏まったも何も前々から状況教えてただろうが」
そう、リンは如何にも今が初耳のようなリアクションを取っているが、そもそもの言い出しっぺはこいつだ。
事の発端はこの世界における二週間前、12月に入ってすぐの頃にリンから「いつまでもツルん家でお世話になるのは…」と切り出してきたことからだ。
そもそもの話、リンの正体についても父さんと母さんには明かしたため、留学生でもない奴を、好意だけで泊めてくれてる状態だったのだ。まあ、二人ともリンのことを気に入ってはいたから、「気にしなくて良い」とは言っていたものの、リンとしてはそうもいかないのだろう。
最初こそこの世界の考え方や常識などが分からず好き放題だったリンも、そんな風に考えるくらいにはこの世界に親しんできて、更には他者を思いやれる様になったというのは喜ばしいことだが、流石にそう簡単に解決出来る様な問題でもないため、俺は速野に相談していた。
その結果、奴の叔父が今は結構人気の定食屋を営んでいて、最近はテレビで紹介されたと言うことも相まって一気に忙しくなったので、人手が欲しいと言う話をしていたことが判明し、俺は速野の人脈の広さに舌を巻きつつも、速野を通してリンをそこで働かせてもらえるよう頼んだのだ。
「…と、こんな感じだな」
「そんなことが…」
「ま、世話になるんだ。文句は言わん」
「寧ろそこまでやってくれてありがとう!」
「気にすんな。殆ど進めてくれたのは速野だ。…そしたら、速野が日程調整してくれたみたいだし、明日挨拶しに行くぞ」
俺がスマホのチャットアプリのトーク画面を見せながら言うと、三人は頷く。
「…涼海は風邪治すところからな?」
「わ、分かってるって…!」
真剣に頷いてから茶化されたからか、はたまた単に熱が上がったからなのか、涼海は頬を薄赤に染めると、布団を被り、内心呟く。
(……群星君の馬鹿!)




