EP60.真のクエスト
大きな揺れの後、地震かと思い試合を続けようか逡巡していると、リンが駆け込んで来る。
「た、大変だよ!近くにある森から変な光みたいなのが…!」
「何!?」
「…どうなってるんだ?おい、流!試合は一時中断だ!」
「…仕方ねえな」
俺達や、二国の王達も急いで外へと出ると、リンの言う通り、森からは禍々しい赤い光の柱が立っていた。
「…!何か来るぞ!」
「伏せろ!」
俺達が伏せると、鋭いナイフのような物が凄まじい速度で飛んで来る。
「これは…羽根か…!?」
「御明察。我等が女神の気高き翼だ」
「あんたは…サボウさん!…と、誰だよお前」
何故か高笑いしながらやって来たサボウさんと隣にいる知らない角刈りの男。
しかし、その姿を認めるや否や、ウェストーの王であるニシキさんは声を上げる。
「な、キョハン!何故イストーの幹部と一緒にいる!」
「どう言うつもりだ!サボウ!」
「ふふふ」
「ははは…!」
サボウさんとキョハンと呼ばれた男の二人は尚も笑い続ける。
「下らないんですよ…ギャーギャーと騒いで」
「お前達は王に相応しくない。俺達が主となり、この二つの国を束ねてやる!」
「その為に女神様を呼び覚ましたのだ…御覧あれ!!
我等の女神を!」
「女神…今度は何だよ…!」
揺れの直後から広がり始めていた暗雲を貫くように、先程も見た禍々しい光が差し込み、凄まじい勢いで何かが降って来る。
「くっ…!」
「何だ!?」
土煙が晴れると、そこには長い黒髪で、白い衣服に身を包み、背中には血のような真紅の翼を背中に生やした17、18歳程に見える少女が居た。
「誰だ、お前」
「ふふっ、私はブレイナ…死と破壊を司る女神、かな?」
「…ブレイナ様!!奴等を消しっ──「五月蝿い」
「!!」
「っ!」
キョハンが卑しい笑みを浮かべながらブレイナに近付くと、言葉は途中で途切れる。…否、言えなかったのだ。言葉を言い終わる前にブレイナの背中に生えた紅い翼から羽根が高速で撃ち出され、キョハンの胸を撃ち抜いたからだ。
キョハンは何が起きたのか理解出来ない顔のまま、倒れ伏し、そして動かなくなる。
「う、うわあああぁぁっ!!な、なんで…!」
「あれ?もしかして私は復活させれば言うこと聞くとでも思った?だとしたら残念!私は誰の言うことも聞かないんだ!…じゃ、さよなら」
「ひいっ!?」
「…仕方ねえ!」
俺は情けない声を上げて顔を青ざめさせるサボウさん…もうさんいらないか。サボウの前に障壁を張り、羽根を防ぐ。
「へえ〜やるね、君、もっと楽しませてよ!」
「…リン!そいつ邪魔だから流しとけ!」
「オッケー!」
「…手、貸してやるよ」
「サンキュー、流」
俺と流はブレイナの前に立つと、ブレイナの放った羽根の攻撃を流は左手をガトリングガンに変化させて撃ち落とし、俺は業火炎聖斬で焼き尽くす。
「…吹っ飛べ!」
「…効ーかない♪残念だったね?」
「ちっ…再生能力持ちかよ…!」
「お前達、やれい!!」
「奴を倒せ!」
「!?バカ!!よせ!!」
「そんな雑魚達、一瞬で遊び終わっちゃうよ?」
「うわあああ!」
「くっ!」
「くそっ!」
二国の王がそれぞれの軍をブレイナに嗾けるが、一瞬に幾多の兵士が羽根に身体を貫かれ、命を落としていく。
「…仕方ねえ…お前等!邪魔だ!退いてろ!」
「うわあ!」
「ひいい!」
「何する気だ?」
「丁度良い。流、リン、奴に攻撃を仕掛けて引き付けてくれ」
「仕方ねえな…良いぜ」
「アタシも任せて!」
「オラッ!」
「魂炎鬼弾」 !」
流は左手のガトリングガンに加え、右手をハンドガンに変えると弾幕を張っていき、そこにリンが蒼炎の弾を放つ。
それを避ける為に着地したブレイナに俺は急接近し、冷気を纏わせた聖剣を突き立てる。
「吹雪氷聖斬!」
「…やるね…!!」
少しすると、ブレイナは氷像となるが、俺は距離を取ってありったけの魔力を冷気に変換し、聖剣を通じて増幅させると、それを振るう。
そうすることによって氷像のブレイナを更に氷が包み込んでいき、巨大な氷塊へと姿を変える。
「…アズマさん、ニシキさん。…今はまだ、こいつをこうやって少しの間封じ込めることしか出来ません。
そしてあなた達が先走って下手な行動に出られると、却って被害が出るでしょう。…こうなった以上、一回休戦して下さい」
「いや…しかし…」
「そう言う訳には…」
「良い加減にしてくれ。仲が悪いのは知ってるけど、あんた等じゃ奴には勝てない。手を組む必要がある。
それには戦争状態は邪魔だ」
「…分かった」
「仕方がないか…」
元はと言えば自分達の部下の不始末であることも分かっていた為か、二人は渋々と言った様子で休戦協定を結ぶのであった…。
…そして、ここからが本当の…真のクエストの幕開けだった。




